第21話 ノウ②
歩いているメリシェの顔は浮かなく、明らかに元気がなかった。
制服姿のメリシェはセイヤの方へと真っ直ぐに歩いてくると、セイヤの横に座った。
「もう仕事は終わったんですか」
セイヤは静かに尋ねると、メリシェは小さく首を横に振った。
「まだ…。でも、セイヤさんもさっきの見たでしょ」
「さっきの…?歩いていた男性達は見ましたが…」
「その彼らよ。私の悪口言ってたの、聞こえなかったですか?ブスとか、頭が変とか、なんか色々言ってたんですよ」
「いや、すみません、ここからだとメリシェさん達の歩いていた場所まで距離があったので、聞こえなかったです。そんなことを言われていたのですか」
「うん、そうなの。さっきのが初めてじゃないんですよ。いつも言われるんです。本当、もうそれがすごく嫌で…」
「職場の方に、相談してみたことはありますか」
「いえ、言ったことはないです。言ったところで、きっと解決しないので…。彼らは優秀ですし、きっと私の方が悪く言われるので…」
「そうですか。でも、このまま言われ続けるのは良くないですし、どこかに相談した方が…」
「だから!プロファーン様に手紙を書いたんじゃない!!」
先ほどまでの静かな口調とは違い、声を荒げるメリシェ。
「…そうですね、すみませんでした。もう仕事が終わったならば、気分転換にこの建物から出ましょうか」
「まだ終わってないので、帰れません。申し訳ないのですが、ここでもう少し待っていてください」
そう言うと、メリシェはセイヤの顔を見ずに立ち上がると、ツンツンとした態度で去っていった。
「…なんなんだ…今回の依頼者は難しいなあ…」
俯いて額に手をやり溜め息をつくセイヤ。
「…でも、これも僕の仕事だから、なんとかやり切らないと。でも…なあ…」
また深い溜め息をつく。
「また誰か死ぬんだもんな…今回は誰なんだ?メリシェさんか、あるいはさっきの男性らの誰かか…どちらにしても、やだよなあ…」
セイヤは天井をあおぎ、とりあえず時間が過ぎ去るのをひたすら待った。
「ごめんなさい!遅くなりました!!」
今度は私服のメリシェが、小走りでセイヤに近付いて来た頃には、外はもう真っ暗だった。
「すみません、ずっと待ってていただいて…」
「いえいえ、お気になさらず」
「あの…もし今日泊まるところがないのであれば…私の家に来ませんか?」
「…え?」
「あっ、違うんです、変な意味じゃないんです。ただ、私1人暮らしでいつも寂しくて…話し相手がいればな…って…」
メリシェは体をくねらせ、もじもじしながら時々上目遣いでセイヤを見る。
「話し相手ですか…それくらいならば、帰り道を歩きながら話すということも——」
「でもっ、話切らないかもしれないしっ、それに願いを叶える方法を私も聞きたいし…!」
「…分かりました。では短時間の滞在として話をしましょう」
「よかったぁ、ありがとうございます〜!」
葉を見せて笑ったメリシェは、セイヤの手を掴んで指を絡ませる。
「そうと決まれば、早く行きましょう〜!」
手を繋いだ瞬間、セイヤは体中に電気がはしったような、今までにない症状に、思わず手を振り解いてメリシェから離れた。
「どうしましたか…?」
「あ…いえ…すみません、静電気かな?ビリッときたので」
「え?静電気?私全然なかったですけど、ま、いっか、行きましょう」
笑顔で歩き出すメリシェ。だが
セイヤは今までにないほどに、1人胸がざわついていたのだった。




