第20話 ノウ①
「いっ…たー…」
背中に大きな衝撃を感じ、セイヤはまた手紙の主の場所へと移動してきたことを理解した。
座り込んだセイヤは目を開けると、目の前にはコンクリートの壁が聳え立ち、背中にもコンクリートの壁。どうやら、来たときに背中を後ろのコンクリートの壁に打ちつけたようだった。
「ここは、どこかの路地裏か…?」
「あの……大丈夫ですか…?」
消えいるようなか細い声に隣を振り向くと、人2人分程開けた隣に、髪の毛がショートカットの若い女性が膝を抱えて座っていた。
「ああ…大丈夫ですよ、ありがとうございますあなたは…大丈夫ですか?ここは薄暗い所で、女性1人いるには危なそうに思いますが、どうされたのですか?」
「あ、えっと、私…今…仕事の休憩時間なので…」
よく見ると女性は制服を着ていた。そして、ハンカチを広げて、コンクリートの上に座っていた。
「…いつも嫌な思いばかりしてたけど、私にも少し運が向いてきたかな…」
体に顔を埋めた女性は顔を上げると、セイヤをじっと見る。
「あなた、プロファーン様でしょう?黒い服…素敵…」
女性は、お尻をずりながら近付いてくる。
「それでは、あなたが手紙を送ってきた…」
「そうです、メリシェです。よろしくお願いしますね」
頬に薄くそばかすが見えるメリシェは、ニッコリと笑う。
「こちらこそ、よろしくお願いします。私はプロファーン様のつかいで、セイヤと申します。少しお話をしたいのですが、休憩時間はあとどのくらいですか?」
「時間…ああっ、やばい、もう戻らなきゃ!あ、セイヤさんは、うちの職場のロビーで待ってて!ほら、急いで立って、一緒にきて」
セイヤの腕を引っ張りあげるメリシェ。
見た目は真面目そうだが、話し出すと少し慌てん坊で人懐っこさも感じられる。
メリシェに連れられて入った彼女の職場の建物は、全面ガラス張りで縦に長く横もどっしりと広く、一目で大人数がそこで働いているのが分かった。
「じゃあ、行ってくるね。その長椅子で座って待ってて!」
セイヤに手を振りながら、エレベーターホールへ小走りで向かうメリシェ。
その間、広々としたロビーで、何をするでもなく、ただボーッと長椅子に座っているセイヤ。
メリシェを待ちながら、プロファーンのことを思い出していた。
セイヤの仕事はもうすぐ終わると言ったが、プロファーンはどうなのか。同じく仕事が終わるのか?それとも、セイヤが去ったのち、また違うつかいの者がくるだけで、プロファーンはあの仕事を続けるのか。
セイヤには、プロファーンがあの仕事を楽しんでやっているようには見えなかった。
いつもどこか寂しげで、感情をあえて見せないようにしているようにも見えた。
「もう少し、プロファーン様と話せればな…」
セイヤは高い天井を見上げると、背後で男性の話す声が聞こえた。
振り返ると、ロビーにあるエスカレーターから、スーツを着た複数人の男性が降りてきた。何を話しているかは分からなかったが、男性達は楽しそうで大きく口を開け笑いながら歩いて行った。
そしてその男性らが右に曲がったとき、その後ろにメリシェが1人下を向いて歩いているのに、セイヤは気がついた。




