第19話 もうすぐ終わる
「こんな所で寝ていると、風邪を引くわよ」
声に驚きセイヤが目を開けると、プロファーンが上から見下ろしていた。
プロファーンの顔は、少し呆れたような表情で、それがなぜか今までより少し距離が縮まったような気にさせられた。
「あなたの部屋を、用意したはずだけれど。何か不都合があったなら、言ってもらっていいわ」
「あ…すみません、なんだかここに寝転がっていたら、疲れていたせいかそのまま眠ってしまって…。あれから、どのくらい時間が経ちましたか?」
「1日経過してるわ」
プロファーンは暖炉の前の大きな椅子の所までゆっくり歩いて行くと、椅子にドサっと座り横の小さな箱の中に手を入れる。
ガサガサと音を立てながら手紙をかき分けた後、プロファーンは手を止め中から1通の手紙を取り出す。
「今回はこれね」
プロファーンは手紙を開くと、瞳だけを動かして読み、その後セイヤに向かって腕を伸ばし手紙を渡す。
「読んでみて」
セイヤは手紙を受け取り、中の文章を読む。
「今度は、同じ職場の人からのイジメを無くして欲しい…ですか…。ごく真っ当な願いですが、…僕がここに行けば、また誰かが死ぬってこと…ですよね」
「そうね」
「…それなら行きたくないです。この手紙の問題なら、然るべき場所と人に相談すれば解決できる可能性は高いですし、そうでなくとも仕事を変えるなどして環境を変えて対処すれば、なんとかなりそうではないですか。それなのに、僕が行ったことで、短絡的な結果…最悪な結末しかし迎えられないのなら、正直行かない方がいいと思います…」
セイヤはプロファーンを真っ直ぐ見つめると、プロファーンは頬杖をつき、セイヤをじっと見つめ返す。
「そう、これに行きたくないのね。それなら、いいわ、別の手紙にするわ。他の手紙の件ならば、人が死んでもいいんでしょう?」
「ちがっ…そういうわけでは…!」
「なら、私が選んだ通りに行きなさい。どの願いにしろ、結果は同じよ」
俯くセイヤに、プロファーンが椅子から立ち上がり静かに近付いてくる。
プロファーンはセイヤの横にしゃがむと、僅かに溜息をつく。
「あなたの首に下がってるユニコーン」
「え?あ、これですか?」
セイヤはユニコーンのネックレスを掴み顔を上げると、憂を帯た目をしたプロファーンと目が合う。
「あなたの仕事が全て完了したら、そのユニコーンのネックレスは外れるわ」
「えっ、本当ですか?全て終われば、僕らはここから解放されるということですか?」
「ええ。あともう少しで終わるわ」
「良かった…!」
セイヤは喜びを噛み締めながら、その場で小さくガッツポーズをする。
しかし、プロファーンは一緒に喜ぶでもなく、視線を落とし自分の体に手を回し、小さく縮こまっていた。
「仕事をしてきます。先ほどの願いの主に、会いに行ってきます」
「そう。いってらっしゃい」
セイヤは目の前の景色が歪み始め出発を覚悟したとき、ふとプロファーンと目が合った。
いつも気丈なプロファーンだったが、このときは今にも泣き出しそうな不安気な表情をしていた。
セイヤは思わずプロファーンに手を伸ばしたが、視界が急激に捻れすぐに意識を失ってしまった。




