表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/36

七章 最後の波乱の舞踏会。2

 そこでは、既にシヤリーが待っていた。

 「ヴィシュー様?」

 「あら、お兄様。」

 隣には、ナンリー様もいる。

 彼女達はヴィシューの名を呼んだ後に、首を傾げて戸惑いだす。

 「え?…」

 「!!?」

 私は驚いて両目を見開き、思わず立ちすくむ。

 自ずと目が合わせられなかった。まるでシヤリーから奪って、本当に傷つけている様な気がしてしまっていた。

 「…誰ですの?」

 さらにナンリー様は呟き、まじまじと此方に視線を向け、交互に見渡してくる。

 「え?…え?…」

 と、シヤリーも呆然として、固まった様に動かない。

 「シヤリー。」

 するとヴィシューは、淡々と告げだす。

 「…今宵の私は、君とは踊れない。…隣の彼女をエスコートするからだ。…」

 すかさず扉を開け放つと、再び此方の手を引いて歩きだす。

 「ちょっと!?…」

 また私は、後を追う様に歩きだした。

 「ヴィシュー様?…」

 シヤリーは、ぎこちなく戸惑いの言葉を、漏らしていた。

 「おい!!…待て!」

 その時、ドギアス王も呼び掛け、シヤリー達とも合流していた。

 「…シヤリーよ。…悪いが察してくれ。」

 だがヴィシューは、全く止まらずに歩き続けていた。

 そのまま私達は、会場の中へ入って行ったのだった。


 次の瞬間には、招待客が振り向き、一斉に視線が集中する。

 会場中から視線が向けられ、私達に集中する。

 「…来ましたね。」

 「おや?…ヴィシュー様が誰か連れているぞ。」

 さらに、誰かが声に出して呟いた。

 それを皮切りに、他の人達も囁き合う様に喋りだす。

 「…あれが婚約者のシヤリー令嬢か?」

 「…私、お見かけした事がありますけど。…違う気がしますわ。」

 「…なら誰だ?…何故、顔を隠しているのだ?」

 ざわめきが段階的に広がる。

 「…いったい、どういう事なのだ?」

 「まさか?…あれ、別の女か?」

 「王家の婚約の場でか?…とんでもないな。…」

 「だとすると、シヤリー嬢も哀れだな。」

 そして彼等の視線が変わってきた。

 (…覚悟はしていた。…でもキツい。)

 と私は、心の中で悪態をつく。一身に視線を浴びて、身が縮こまってしまう。

 (本当なら、この場はシヤリーが幸せになる筈の場所だったのに。)

 「おい、…降りるぞ。」

 対してヴィシューは平然と呼び掛けてきて、また腕を引きながら、階段を降りていく。

 だが私は、立ち尽くす。前に出るのを躊躇し、僅かに抵抗する。

 すぐにヴィシューも、此方に振り返ると、視線を向けてくる。

 互いに沈黙し、視線が交わった。

 (…この男が憎たらしい。…アンタの自分勝手のせいで。)

 私は心の中で、再び怒りを募せる。

 ふと頭の片隅で、つい妄想が浮かんだ。

 (……あの時は、此処にはシヤリーがいて、凄く幸せそうだったわね。…あんな感じに私も、もし誰かの隣を歩くなら、ライルならいいかも。)

 「ヴィシュー様!」

 それと時を同じくして、聞き覚えのある声が呼び掛けてくる。

 私は我に返り、後ろを振り返る。

 ちょうどシヤリー達が扉から会場内に入ってきた。

 少し遅れてドギアス王も姿を現し、兵士を伴いながら、やってくる。

 「だから、貴方は誰ですの?!」

 するとナンリー様が先に辿り着くと、大きな声で言いだした。

 「…お兄様じゃない、ですわよね!!」

 「え?!」

 また誰かが呟いた。

 (…そうよ!!…あんなに妹にべったりなのに、なんで今のヴィシューは、私だけを連れてきたのよ?…あっちのドギアス王も兵士を連れているから、本物!?…)

 私もハッとして違和感に気がつく。

 すぐに再び前へと顔を振り向かせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ