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第48話「封印」

 お姉ちゃんがわたしに託したのは、壺。ただの壺じゃないのはすぐに分かった。でも上手くいくのか分からないよ。


「ティル神よ! 残りの者たちにも裁きを!」


「よかろう。では……」


「「あぁあああ!!」」


 口元を緩ませながら神様は力を行使する。ただし、矛先は信者さんたち。


「お前たちは図々しいぞ。神である私に指図をしよって。いちいち癪に障る」


 埃を払うみたいに命を扱う。わたしの思う神様とはかけ離れたその女性は恐怖でしかない。


「ティル神、それが神のすることでしょうか」


「私に物言いとは身の程知らず。人間の価値観を押しつけてくるな」


 リンさんが強気に食いつくけど駄目みたい。まったく相手にされていないよ。

 ここはわたしがいかないと。お姉ちゃんから託された壺を使って立ち向かわないと! それがわたしの罪滅ぼし。たとえ刺し違えてでも。


「どうしても人間を滅ぼすつもりなの?」


「愚問だぞ。そうコロコロと心変わりなどするものか。終わりぞ」


「分かったよ。それがあなたの揺るぎないものなら、わたしは徹底的に抵抗するよ!」


「ほう。命の恩人に対して歯向かう気か。恩を仇で返されることになろうとは」


「それとこれとは別。今、あなたは世界の脅威なの。大人しくしてもらう!」


「バカぞ。身の程を知れ、人間!」


 神様が矛先をわたしに向けてきた。それでいい。それこそが最大の狙いだから。

 お姉ちゃんから託された壺を神様に向けて差し出す。壺がカタカタと揺れ、内側から光が飛び出していく。


「な、なんだこれは!? 小賢しい!」


 光を払おうと身体を動かす神様だけど無駄だよ。それはお姉ちゃんの最大の抵抗なんだから。


「ちっ! 消し飛べ!」


 神様による万物破壊。ありとあらゆる存在を無に返す最強魔法。発動すれば万事休すだよ――発動すれば、ね。

 神様の目が大きく開いてわたしを見る。そう、発動はしない。その光は万物破壊の光。神様の魔法を破壊する光!


「あなたは、お姉ちゃんの魔法を下位だと言った。なら、その上位魔法そのものを消せばいいだけ」


「私の魔法を……ククク……ハッハッハ! 人間風情が生意気に。見事に1本取られたというわけぞ」


 光に包まれた神様は徐々に小さくなっていく。そして光と共に壺へと向かってくる。


「あなたを封印します! お姉ちゃんが創造した壺に!」


「封印? 神を封印だと。なんという罰当たりぞ」


「わたしに罰を下すのはあなたじゃない。王様だよ」


「ふ……封印……世界の創造主に……きぃいやあああ……!!」


 壺がカタカタと震える。それは神様が吸い込まれているということ。あとは、この壺をお姉ちゃんの遺体に封印するだけ。


「ユキちゃん、何をしているわけ!?」


「封印のお札の代わりがお姉ちゃんなの。ほら、壺がお姉ちゃんの身体に吸い込まれていくでしょ?」


「……ミア様の考えが……お分かりに?」


「うん。不思議と分かるんだよ」


「……ねえ! ミアおねえちゃんが!?」


 リフェアちゃんが驚きを隠せない。それもそうだよね。お姉ちゃんの身体が宙に浮いているんだから。


「ごめんね……お姉ちゃん……! 姉不孝な妹で……」


 白い光に包まれたお姉ちゃんの身体は、そのまま消滅した。

 わたしの身体が温かさを感じる。ううん。みんなも同じみたい。それはお姉ちゃんからの、世界に魔法が戻った知らせだったの。

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