第49話「涙に囲まれながら」
神様の消滅により、人々は呪縛から解放された。あんなに怖かった街が明るくなったの。この雰囲気を保っていれば大丈夫。
もちろん綺麗事ばかりじゃない。本当に心から神様を慕っていた人たちもいたわけで。わたしたちのことを批難する声が心にズキズキ刺さって痛い。でも、わたしたちに声を静める権利はない。逆の立場だったらきっと……。
そして、今は王様の前にいる。リンさんの魔法で戻るのは楽チンだったけど、心の準備が間に合わなかったよ。
わたしたちから事情を聞いた王様は深く頷いた。そして深く息をついた。目を閉じて天を仰ぎ、それから再び向き直る。
「全てを理解した。ティル神が本当に存在していたとは。それから……ミアのことは非常に残念だがね」
王様の目は揺れている。わたしを見て眉間を押さえている。きっと葛藤しているのかもしれない。
「王様。わたしは覚悟できています。苦しまなくていいです」
「……そうか、覚悟を決めているか」
「王様! ユキちゃんは……ティル神に当てられただけ! どうか情けを!」
「私からもお願いします。どうか寛大な判断を!」
「おうさま、おねがい!」
ヴェルさんもリンさんもリフェアちゃんまで……! わたしのために……嬉しいよ。でもいいよ、気持ちだけでね。
「わたしは素直に受け入れます」
どんな理由であれ、わたしは人を殺めた。お父さんとお母さんを殺した人たちも神様の手に落ちていたとしても、殺したことには変わりない。わたしも同じ……なら……。
「ユキ。君に……死刑を言い渡す」
「はい」
王様の声は震えていた。最後の最後まで葛藤してくれていたなんて優しいよ。
3人の顔が曇って固まって。何か言いたそうにしているのが分かる。みんな優しいよ。
わたしを近衛騎士たちが囲む。その中にはキョウさんもいる。お父さんの部下だった人で、お姉ちゃんのことを何かと気にかけてくれていた。
「……ユキ嬢……」
「そんな悲しそうにしないでよ。サクッとお願いね」
わたしは精一杯の笑顔を見せたつもり。でもキョウさんの顔は晴れない。とても苦しそうにしている。
「目を閉じて。……最後に言いたいことはあるかね?」
「今までありがとうございました。わたしの第2の人生は、短くとも充実していました。……さようなら……」
「……どうか天に向かうよう祈っておる。執行――!」
「どうか姉妹仲よくな。斬!」
わたしの耳に最期に聞こえてきたのは泣き声だった。王様の、リンさんの、ヴェルさんの、リフェアちゃんの、キョウさんの――みんなの泣き声。
みんな優しいよ。わたしのために泣いてくれるんだね。わたしは幸せ者だったよ――。




