第45話「ティル神」
ボクたちが連れてこられたのは、如何にもな建物だった。この街の贅を惜しみなく使ったのが分かる。
中は広いが殺風景。赤い絨毯が一面に敷かれているが、肖像画とか壺とか、剥製とかもない。つまらない家なこった。
「そこに座れ。ティル神の御前である」
ボクたちを連れてきた人たちが一斉に座る。かしこまっちゃって。そんなにヘコヘコしなくても平気だって。ティル神なんてデタラメなんだからな。
「「――!?」」
な、なんだ……!? 急に身体が重く感じる!
みんなも同じようだな。目を見開いて驚いてる。
「騒がしいぞ。いったい何事だ」
階段から現れてくれた方がよかった……! いきなり目の前に現れて睨みを効かしてくるだなんて……。
「お騒がせして申し訳ありません! ティル教とティル神に対して無礼を働いたため、ティル神に裁きを下してもらいたく連れてきたのです!」
ボクに対して凄い気迫を放っていた男のひたいに汗が。まるで別人だねえ。
「そんなことで連れてきたのか。そんな回りくどいことなどせず、お前たちが適当に片づければいいものを」
「は! し、しかし! この者たちの強さは別格でして」
「別格、か。確かにそうだろうぞ。私が与えてやった力なのだからな」
はあ?
「ティル神。この者たちをご存じで?」
「よーく知っているぞ。今も思い出す。2人の魂の傷つきようを」
「……アンタ、誰かと勘違いしてるんじゃないか?」
「勘違いなどするわけないぞ。私がお前たちを転生させ、力を与え観察していた」
「観察だと……?」
「ああ。暇潰しにぞ。しかし、もう飽きた。そろそろ潮時ぞ」
観察……潮時……転生させただと……!? いったい何を言ってるんだ。
「あなたが、わたしとお姉ちゃんを転生させたってことですか?」
「そうだ。名はミアとユキだったな。ミアには破壊と創造の、ユキには全属性と治癒の魔法を与えた。だが、それは不完全なもの。私の下位でしかない」
「あなたは……何者なんですか!」
「そやつらがさっきから言っているぞ。私はティル神。この世界の創造主であり、唯一無二の存在ぞ」
「……ふ……ふざけんじゃない! いきなり言われて納得できるわけがないだろう! 下位互換だぁ? 言ってくれるじゃないかい。ボクはそう簡単に信じる人間じゃないんだ」
「そうか。ならば証明してやるぞ。お前は命を創造できないと思っているようだが違う。単にお前の魔法が下位というだけぞ」
「証明してみろよ」
「いいぞ。涙の再会といこうではないか」
ティル神が指を鳴らす。静かな屋内に響く指パッチン。耳に伝わるその音は不気味だ。明るく軽快なんて微塵も感じない。
2つの影が現れた。それは懐かしくて嬉しくて堪らないのに、心に感じるのは不気味さだけ。
「……父さん……母さん……!?」
あのとき死んだ両親がボクとユキに微笑みかけてくる。優しくて安心するはずなのに、今はちっとも感じない。
黒髪は今にも伸びてきそうで、日光をまったく知らなそうな白い肌が冷たさを、漆黒の目は感情を捨てているみたいだ。神ってよりも魔女って方がしっくりくるやつだな。……厄介なやつだねえ……ムカつく!




