第44話「血色の指輪」
男は丸腰だ。なんなら身ぐるみ剥がそうか。
ボクの万物創造でひと突きだぜ!
「先手必勝!」
魔法の使い方が上達しているのが分かる。試しに重力を破壊してみた。ボクだけ無重力状態。動きがスローになるから不利という先入観を逆手に使う。
「な!?」
「油断大敵!」
重力を破壊して自分の動きをスローにし油断を誘い、相手が動く瞬間を読んで重力を創造。重力が戻った瞬間、右ストレートを顔面にぶちこむ!
狙い通りに吹っ飛びやがったねえ。気持ちよかったよかった。
「やりやがったな!」
「喧嘩吹っ掛けてきたのはそっちじゃないかい。ボクは喧嘩を買ってやったんだ。どうだ? 客に殴られた感想は」
「胸糞悪い、だ。この手は使いたくなかったが――捕らえろ!」
男の一声で人が集まってきた!? いったい何がどうなっていやがる!?
「ミア様、抵抗はやめておきましょう。みなさんの様子がおかしいのです。まるで生気がありません」
「操られているってことか!」
あの男の仕業かねえ。人を操る能力だとしたら厄介だ。他人を意のままに操れちまうんだから。
「外れだ。これは魔法ではないぞ」
「魔法じゃないだと?」
「これは恵みだ。俺たちティル教への。魔法使いなど不要! ティル神さえあればいいのだ!」
男が得意気に指輪を見せてくる。血で染めたように赤くて気味悪い。見慣れない文字が彫られているが、あのデタラメ教主が作った文字だろう。
「ミアちゃん、引いて。ティル教に迫れるかもしれないわ」
「お姉ちゃん、ここは我慢して」
「しゃあない。いっちょ乗ってやろうじゃないか」
ティル神なんているわけないのに。いったい何がどうなってる。何か妙に胸騒ぎがするな。
「大人しくすることだ。ティル神に会わせてやろう」
なんだと!? そんなバカな!
「かみさまにあえるのじゃ?」
「リフェちゃんにはワタシがいるじゃない。ティル神よりも一緒に遊んであげるわ」
「そうじゃな! おねえちゃんとあそぶほうがいいのじゃ!」
サンキューロリババア。子どもは乗せられやすい。真っ先に守ってやらないと。
「来い」
街の人たちを元に戻してやらないと。肩を震わせていたのは、操られることを知っていたからに違いない。
それにしても厄介というか面倒というか。そのうち、ティルってだけで拒絶反応が出ちまうかもな。気をつけよう。




