第41話「お茶の繋がり」
風に乗ってひとっ飛び――とはいかないもんだねえ。
青空と緑は心が洗われるが、ちと飽きも早い。20分ほどでボクたちは景色に飽きてきていた。欠伸が出るくらい。
「うーん。人数が多いと厳しいよ」
ユキの魔力が思ったよりも早く尽きそうだ。これじゃあ直行は無理そう。確か集落があるんだったよな。ちょっと寄ってみるとしますかねえ。
「ユキ、降りよう。無理に飛ばずに休むんだ」
ユキが「ごめんね」と言ってきたが気にしない。歩くよりも速く進めていたのは確かなんだ。
集落に寄ると、子どもたちが元気よく走り回っていた。子どもは風の子だ。この草原が公園みたいなものなんだろう。
「こんなところにご用が?」
「いや、特別用はないんだ。ただ、ちょっと休もうかと」
集落の女性から声をかけられた。すんごく怪しまれている気がするが気にしないでおく。怪しい者じゃないわけだし。
「そういうこと……。でしたらお茶をお出しします。小さなお茶屋をやっているのですが、外から来る人は滅多にいないんです。是非宣伝をしてください」
茶屋かあ。喉が渇いていたところだし、お言葉に甘えちゃおう。異世界の茶屋が出すのって何茶だろう?
それにしても元気な子どもたちだ。ボクたちを怖がるところかくっついてくる。
「ねえねえ、銀髪のお姉ちゃん。どこから来たの?」
「王都からだ。ちょいと野暮用でな」
リフェアより年上だと思う男の子。10歳くらいか。何にでも興味津々なんだろう。ジロジロとボクたちを見ている。
「へえ。ねえねえ、あっちの金髪のお姉ちゃんは? おっぱいが大きい方!」
金髪のお姉ちゃんと言われると、ロリババアとユキのどっちかと思うが、胸が大きい方とすればユキになる。そういうところは男だねえ。
ロリババアの笑顔が硬いな。男の子の「おっぱいが大きい方」が効いたようだ。さっきまでの笑顔を思い出せ。
「どうしたの? わたしに抱きついて。くすぐったいよ」
あのガキ! なに調子に乗ってユキに抱きついていやがるんだ。ユキの身体をベタベタ触るなんざ10年早い! っていうか触るんじゃない!
「お姉ちゃんのおっぱい柔らかい」
「そんなに大きくないよ。甘えん坊さんだね」
ユキもユキだ。好き放題触らせてるんじゃないっての。きっと今に付け上がる。
「息子がすみません。少々甘え癖があって手を焼いています。年上の好みの女性にしか見せない癖なんです。さあさあ、こちらに。お茶をお出しします」
アンタの子かい!? 子持ちとは驚いたねえ。看板娘と言っても通用する童顔だぞ。息子は年上好きときたか。好みの女性にしか見せないって、胸が大きいってことか。まったく解せないねえ。胸の大小で選ぶだなんて子ども子ども。
「銀髪のお姉ちゃんのおっぱい小さいよ」
「あ、あはは……っち!」
胸だけが女性の魅力じゃない……魅力じゃないもん!
「お待たせしました。こちらが当店のお茶です」
こうなったら、お茶で気分を変えるもん。やけ酒ならぬ、やけ茶だ。では早速……あれ? このお茶って……。
「お姉ちゃん、これって緑茶だよね」
ユキも同じ意見だ。間違いない、これは緑茶だ。
でもなんでだ? この世界に緑茶は存在しないはずだ。
「お口に合いませんでしたか?」
「あのさ、訊きたいんだけど、このお茶はどこで?」
「それが不思議な話なんです。少し前に、この集落に人が降ってきたんです。それも2人」
「人が降ってきた!?」
「はい。集落中が大騒ぎになりました。外から人が来ることなんて滅多にないところへ、いきなり降ってきたんですから。みんな怯えてしまって」
「でも悪人じゃなかったんだろう? 見た感じ無事みたいだから」
「はい。そちらの方たちよりも綺麗な金髪の女性が凄くて凄くて。店の屋根が傷んでましたが、あっという間に直してくれたり、はしゃぎすぎて転んでしまった息子の傷を治してくれました」
なんだそりゃ! ボクとユキの魔法と同じじゃないか! でもおかしい。ボクとユキの魔法は2つとないはず。
「その2人の特徴とかって覚えているかい!」
「忘れるはずがありません。このお茶も、その金髪の女性が出してくれたんです。パッと。一緒にいた男性の故郷のお茶だそうです」
「故郷の……!? お願いだ。2人のことを教えてくれ! この店の宣伝はするから!」
「男性の方も女性の方も、みなさんと歳はそんなに変わらなかったと。男性の方は、マゼンタの髪とシアンの目の印象が強烈で覚えています。とても息子によくしてくれました」
マゼンタとシアンの男。
「女性の方は、やはり綺麗な金髪が印象的でした。それから優しい笑顔。癒されました」
金髪が綺麗な女。
「お姉ちゃん。闇と関係あると思う?」
「さあな。覚えておいて損はないのは確かだ。ねえ、2人の名前は?」
「そういえば訊いてませんでした。向こうも名乗りませんでしたね」
まったく、世界は広いねえ。油断も隙もない。そう簡単にお株を取られてたまるかってんだ。




