第40話「風に乗って」
ボクとユキとリンさんは固まっている。誰かに動きを封じられているわけじゃない。目の前で繰り広げられる光景に固まっている。
「リフェちゃん、リフェちゃん!」
「なーに? ヴェルベルアおねえちゃん」
ロリババアとリフェアが仲よく手を繋いでいる。仲がいいことは素晴らしいこと。だけど困ったねえ。
「どこいきたい?」
「どこでもいいのじゃ」
「「あはははは」」
街を出てからこの調子だ。ロリババアは完全に骨抜きにされたらしく、リフェアが笑顔を向ければ笑顔を浮かべる。
リンさんが次の行き先を決めかねているのだが、それは2人が原因であった。
「あんなに楽しそうにされては、なかなか踏み込めません。私たちを警戒する存在が現れてもおかしくありません。私、お2人から笑顔を奪いたくはありません」
リンさんの表情は浮かない。ボクとユキのことと、目の前の笑顔のあいだで揺れているんだ。
「ロリババアもリフェアも強い。あまり心配するだけ損だ」
「ミア様」
「ヴェルさんもリフェアちゃんも分かってくれるよ」
「ユキ様……分かりました。お2人の笑顔と数多の笑顔。天秤にかけるまでもありません」
リンさんは、ボクとユキに地図を見せる。リフェアの街からだいぶ歩くみたいだねえ。こりゃまた自転車の出番。
「村や集落は点々としています。が、纏まったものを揃えるのでしたら行くしかありません。自転車で行くのが一番なのでしょうが、ミア様の運転は少々乱暴で難ありです。素直に歩いていきましょう」
「どのくらいで着く?」
「2時間ほどではないでしょうか。通常は馬車に乗るものなので、徒歩ではどれほどか定かではありません」
うげ!? リフェアを連れていることを考えると、もっと時間がかかるだろう。さっきの戦いの疲れだってある。歩くのは現実的じゃないと思う。
「ユキ。風でボクたちを浮かせたりとか……できない?」
「できなくはないよ。ただ、わたしの魔力も有限だから。街まで続くかは分からないよ」
「それでもいい。無理のない範囲で頼む」
「お姉ちゃんの頼みなら仕方ないね。ちょっと頑張っちゃお!」
我が妹ながら頼もしいねえ。お姉ちゃん、嬉しすぎて泣けてくる。くぅー!
「リフェちゃーん」
「はーい」
別の意味でも泣けてくる。笑顔を絶やさないでいてくれ。
「じゃあ早速いくよ!」
ユキの風がボクたちを包み込む。安心する風だねえ。
足が宙に浮く。ちょっと怖いけど我慢我慢。歩いて疲れるのに比べたら。
「ユキちゃああん。怖い怖い!」
「こわいのじゃ!」
「ご安心ください。ユキ様の魔法は、ご加護があります」
いったい誰の加護だ? まあ、ユキの魔法は信用できるけどねえ。さあ、出発!




