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第37話「風に用心」

 正直妬いてます。ミアちゃんもリンも見せつけてくれちゃって。ワタシだって活躍したくなるじゃない!

 まして相手はティル教。ティル教だった(・・・)ワタシが相手をしなくてどうするの。


「仲間を傷つけた罰を受けてもらう」


「それはいただけないわ。傷つけられるようなことをしたのが悪いんじゃない」


 戦いは得意ではない。でもやらないと。これはワタシの意地。罪滅ぼし。ワタシのせいで傷ついてしまった人への。ティル教のせいで傷ついてしまった人への。


「反省の色なし。攻撃開始」


 丸腰なイケメンが襲いに。随分と大胆なこと。

 だけど残念ね。ワタシは安くない。


「隙だらけだわ!」


 その無駄に締まった腹筋に痛いのをぶちこんであげるわ!

 ふふっ。結構いい声で鳴くじゃない。もっと聞かせてくれないかしら。

 ――ぐ!? なかなかの蹴りを。咄嗟にガードをしたけど、腕が痺れて……。


「隙だらけだ」


「……がはぁ!」


 なんて足技なの!? 速すぎて対応しきれない。目で追えない相手に勝ち目なんて……。


「終わりだ」


 首を絞められて……無様だわ。意識が……。


「しっかりしろ! ロリババア!」


 ……ミアちゃん……。


「お姉ちゃん。わたし、加勢するよ。ヴェルさんを助けないと――」


「――駄目だユキ。ボクたちは手出ししちゃ駄目なんだ。こいつはロリババアのためなんだ」


 ……言ってくれちゃって……。簡単にくたばるわけにいかないじゃない。

 痛みを、苦しみを感じるうちは諦めちゃ駄目。生きているうちは……生きようとしないと……。


「さらば」


「……かっ……てに……ころすんじゃ……ないわ。ワタシだって……たたかう」


 18年なんてまだまだだわ。長い長い人生の僅かでしょうに。こんなところで死ぬわけには……いかない!


「なに!?」


「……ごほ! ……ごほ! ……もうすぐであの世だったかしら。間一髪だったわ」


「何をした」


「ワタシの魔法……風を使ったまでだわ……ごほ!」


 ワタシの首を絞めていた手を落としたまで。

 どうかしら? 見えない風の刃の味は。


「なんと残虐な」


「ごめんなさい。こっちは精一杯だったのよ。傷なら治せるわ。優秀な魔法使いがいるからね」


 まあ、どんな状況であっても殺しはしなかったわ。命にワタシが線を引く資格はない。


「お疲れさん。よく踏ん張ったな」


「あのまま逝ったらどうするつもりだったのかしら?」


「簡単に死ぬたまじゃないだろう、アンタ。本当にヤバかったら助けてたぜ」


「お姉ちゃん。わたし、すっごくヒヤヒヤしたんだよ!」


「いいじゃないか。無事に終わったんだし」


「そういうことじゃないの! どうして冷静でいられたの!? さっきも言ったよね……」


 また始まったみたいね。ユキちゃんの説教。仲がいいこと。

 おやおや。こっちも始まったみたいだわ。


「私たちの勝ちです。では、洗いざらい吐いてもらいましょうか。拒否するのは構いません。ですが、身の安全は約束できません。ご了承ください」


 リンの笑顔が怖いわ。涼しい顔で脅しているメイド……笑えないわ。

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