第36話「戦うメイド」
戦うメイドはいかがですか?
身の回りのお世話を精一杯させてもらいます。どうかご遠慮なく、どんなことでも仰ってください。
「よくも仲間を! 許さないッス!」
「大変申し訳ありませんでした。彼女は少々浮世離れのため、世間の渡り方を知らないのです」
「お前を潰してやる」
「非礼はお詫びしましょう。ですが、そうやって何でも暴力で解決しようとするのはいただけません」
「仲間は暴力を振るわれた」
「それはお互い様でしょう。度は過ぎていましたが、対抗手段としては最善でした。貴方と私は暴力を行使せずにいきませんか」
戦いは好みません。どんな理由であれ。絶対に本当の解決にはなりません。
この世には魔法が存在しています。今や公私に渡り不可欠なものです。残念なことに、この世の争いの道具ともなっていますが。
「断る。力こそ絶対!」
「そう……ですか。残念です。平和的な解決をと思っていたのですが仕方ありません」
魔法は、使い手によって善にも悪にも変わります。何が善で、何が悪なのか……そのときによって変わるでしょう。
では、今はどうでしょう? 私の魔法はどちらなのでしょう? 誰が善か悪かを決めるのでしょう?
「潰すぅううう!!」
そんなことを問う暇はなさそうですね。直情径行なのは結構ですが、それでは折角の筋肉を活かせません。
まっすぐなのは好きです。ですが、貴方の曲がった行いは嫌いです。一方的な暴力は、ただの身勝手でしかありません。
「すみません。私……」
「うがああああ――っ!?」
「……ただの暴力は嫌いです」
私の魔法は闇。全てを飲み込む漆黒。
貴方の右腕は、私の闇に飲まれました。私が許可しない限り、永遠に右腕は戻りません。
「……うで……う……で……」
「いくら身体を鍛えようとも、痛覚までは鍛えられません。少しは反省なさってください。そうすれば右腕はお返しします。私、鬼ではありませんので」
メイドとしては扱いに困る魔法ですが、決して不便な魔法ではありません。闇も使いようなのです。
「やったぜ、リンさん!」
「ええ。あまり気持ちのいい勝ち方ではありませんが」
「勝ちは勝ちだわ。向こうだって覚悟決めていたはず。……そうでしょう? イケメン君」
「…………」
「無口なクール系ってやつか。ワタシは嫌いじゃないわ」
「貴女がいきますか?」
「ただ見ているのも退屈だしね。同じティル教ってこともある。ここは譲ってくれると嬉しいわ」
ヴェルベルア様にはヴェルベルア様の心情があるのでしょう。これもまた覚悟なのですね。
「分かりました。お願いします」
「任されたわ!」
ヴェルベルア様。貴女の戦い、拝見させていただきます。ミア様と交えた実力をしかと焼きつけなければ。




