第38話「和解の目」
洗いざらい吐いてもらいましょう。しかしながらどうしたものか。どうやって口を割らせればいいのでしょうか。
相手方の趣味嗜好が分かれば簡単なのですが。色仕掛けが有効ならば苦労はありません。ミア様とユキ様にヴェルベルア様もいらっしゃいます。微力ながら私も。試してみましょうか。
「細身の貴方は、どういう女性がお好みで?」
「何?」
「それだけ容姿が整ってらっしゃいますし、強さも決して並みではありません。さぞおモテになるのでは?」
「……興味がない」
私の問いの返答に間がありました。視線も逸らしました。興味がないというのは嘘でしょう。
「貴方と戦った彼女――ヴェルベルア様なんてどうですか? 幼く見えるかもしれませんが、あれで18歳でございます。素直ではないところがありますが、それが魅力でもあります」
「……興味……ない」
「ちょっとリン! なにワタシを売り込んでいるの! っていうかイケメン君も大概だわ! 興味ないって軽く傷つくんだけれど!?」
いいえ、リン。興味がないというのは嘘です。貴女の言葉に反応して視線を僅かですが動かしました。
「そちらの持つ情報をこちらに提供してくれれば、身柄を解放いたします。どうでしょう」
「……断る」
「ヴェルベルア様とのひとときをお約束しましょう」
「……断る」
「彼女もティル教の祝福を受けています。ほかの方々よりも話が合うと思いますよ」
「…………」
長考に入りました。もうひと押しといったところでしょう。
「ワタシを置いて話を進めないでくれない!」
「申し訳ございません。では、お2人でお話ください」
「へ!?」
話す内容は問いません。近づくだけで充分なのです。
「落としてください。もう落ちかけていますので」
「はあ!?」
ヴェルベルア様の目が点でございます。面白い反応です。そういうのを見せつければいいのです。
また彼の視線が動きましたね。口ではどうとでも言えますが、目はそうではないようです。目は口ほどに物を言いますから。
「何も話さない」
「はあ。教主様は死んだわ。ティル教はデタラメ。ティル神なんてものは存在しなかった。ワタシたちは利用されたにすぎないわけ。これが真実だわ」
「どうして言いきれる」
「もう教主様の声が聞こえないわ。あそこにいる銀髪の彼女が殺したから」
「教主様を!? それは神殺しも同然! 何故殺さない!」
「だから言ってるじゃない。ティル神なんていないし、ティル教はデタラメだったって。信じられないのは分かるわ。でも現実。だからワタシは足を洗った」
「綺麗事を。罪は消えない」
「分かっているわ。誰かに背中を刺されてもしょうがないわ。それまでは生きて償っていくつもり」
「償いだと?」
「失った命は戻ってこない。なら、今ある命を失わないように生きるのがワタシの償い。ティル教の行いで苦しむ人がいるのなら、ワタシは救っていく。この街がその始まり」
「この街の人間をだいぶ傷つけた。命までは奪っていないが、死ぬよりも辛いめに遭わせてしまったかもしれない」
「生きてさえいればやり直せるわ、お互いに。まずは心からの謝罪を。ワタシたちも協力するわ」
「信じていいのか」
「ティル教よりはマシだわ。……お願い。知っていることを話して」
ヴェルベルア様が差し伸べる手は、彼にはどう映っているかは分かりません。救いの手に映るか、地獄への手に映るか。
「その目を信じよう」
彼はヴェルベルア様の目を見て手を取りました。何か感じたのかもしれません。目は口ほどに物を言いますので。
リフェア様が目を丸くしてらっしゃいます。驚くのは無理もありません。先程まで戦っていたのですからね。
「これが大人というものです」
「お、おとななんじゃな!?」
かわいらしい反応が堪りませんね。抱きしめたくなります。




