第28話「野宿……ではない」
村を出て数時間。気がつけば夕方だ。
今は森を歩いている。距離が短い街を目指しているんだが、なかなか森から抜け出せない。
「なあ、この辺で野宿といこうぜ?」
「野宿、ですか。森での寝食は落ち着けないと思われますが」
「ボクの魔法があれば大丈夫だ。どっか拓けているところは……あった! これだけ広ければ充分だろう」
野宿の定番といえば寝袋だけど、そんなんじゃ気持ちよく寝れないもんねえ。折角の万物創造、有効利用しなくちゃだ。
「……嘘でしょ……!?」
エッヘン。家を創造しちゃったぜ。ロリババアが口をあんぐりさせて驚いていやがる。まあ無理もない。
中も上出来。ダイニングキッチンと寝室があれば問題ないだろう。これでリンさんの手料理が食べられる。
「流石はミア様。恐れ入ります」
「こんなこと夕食前だぜ。リンさん。ボク、腹が減ってしょうがない」
「すぐにご用意いたします。食材はどういたしましょう」
「何でも言ってくれ」
ボクの万物創造は便利だ。家も食べ物だって創造できる。
「凄いとかを通り越して恐ろしいわ。世界の理を壊している」
「人間を創造することはできない。残念なことにねえ」
「人を魔法で作るなんてバカげているわ。できてはいけないでしょう」
「ズバッと言っちゃってくれちゃって。実行した結果を言ったんだけど。見事に心を抉られちゃったじゃないか」
「……バカげているわ」
もしもボクが人間をも創造できていたら、もしかしたらボク泣いて飛びついてきているだろうに。
「お姉ちゃん。何か時間を潰せる物はないの?」
「漫画でも読むか? うーんと……」
ユキが前世で読んでいた漫画のタイトルは……そうだあれだ! ……よし、上手くいったな。
「それって、わたしが読んでいた漫画だよね? しかも巻数が増えてる。わたしが読んでいたときは3巻までだったのに」
「漫画のタイトルさえ知っていれば大丈夫みたいだ。我ながら驚いてる」
「ここが異世界だからこそだね。元の世界でできちゃったら大変だよ」
「確かにな。でも安心してくれ。こっちの世界の物はちゃんと買ってるから」
「あくまでも、元の世界の物限定ね」
まあ、食材を創造しちゃってる時点でどうなんだって話になるだろうけど。それはそれ、これはこれってことで。
「ワタシが口を挟むのはどうかと思うけど、あまり大っぴらに使っていい魔法じゃないわ。その魔法目当てに近づく者が現れても不思議じゃないわ」
「一応、気をつけてはいる。ボクの魔法のことを知っているのは、宮殿の人間とアンタだけだ」
「ワタシの口を封じる?」
「いや。アンタは口堅い方だろう」
「どうして言いきれるのかしら」
「なんとなくだ」
こういう“なんとなく”は当たる。ボクの少ない人生経験が言っている。
ああ~、いい匂いが胃を刺激してくる。絶対に美味しい匂いだねえ。リンさんの料理はどれも美味しいんだけどねえ。




