第26話「生か死か」
ワタシは絶望の底に落ちていた。目の前が真っ暗になっていた。太陽でも照らすことのできない闇の中。
そんな闇からワタシを救い出してくれたのが教主様。太陽よりも眩しい希望が現れてくれたわ。
「君を神の使者にしてあげよう。君が私の手足となってレイダスを変えるのだ」
生まれ変われた気がした。これがワタシの運命なのだと。
教主様のためにレイダスを西へ東へ奔走したわ。ティル教を広めるために。ティル教がレイダスを変えてくれると信じて。
「神のお告げです」
それが正しいと信じていた。ワタシは誇れることをしていると信じていた。
けれど、どこかで目を逸らしていた。ワタシの行いが生んだ悲劇から。そう、悲劇だと認識していたわ。
「ああ……ああ!?」
何度も声を上げた。胸が張り裂けそうになった。
ワタシよりも酷い絶望に落ちている人たちを見て苦しくなっていった。
――ワタシは間違っている!?
次第に絶望の闇に落ちていく。教主様の声すら届かないほど。それでも耐えた。信じたかった。この半年のあいだ、ワタシにとって絶対の存在だったから。
「ティル教はデタラメで教主は死んだ」
銀髪銀眼の少女の言葉。
どうにか耐えていたワタシの心を崩すには充分だったわ。もう何も信じられなくなってしまった瞬間でもあった。教主様からの連絡が途絶えたことにも説明がつく。
――ワタシは終わりのよう。この命をもって償いとしましょう。足りないのは分かっているわ。けれど、これがワタシの運命だったんだわ。
あらかじめ口に含んでいた毒の錠剤を歯で挟む。これを噛みしめた瞬間、ワタシは死を迎える。
※ ※ ※
冗談じゃない! アンタが間違ったことをしていたのは確かだ。でもアンタを裁くのはアンタじゃない!
「……どういうこと!?」
「ワンパターンで助かったぜ。あの教主と同じように毒で死ぬつもりだったんだろう」
「どうして死なせてくれないの!」
「死ぬだなんて軽々しく言うな!」
教主とアンタは違う。それだけは断言できる。
アンタを裁くのは神でも悪魔でもない。王様だ。
「……うぅ……うわああん」
「アンタがすべきは謝罪だ。泣き崩れるのはあとだぜ」
それにしても、よく泣く人だな。泣き虫属性まで完備とはねえ。
村人たちはポカンとしている。その反応は当然だ。さてと、ユキとリンさんのところに行くとしますか。




