第96話 茜と祥子……従妹同士の美しいようで歪んだ関係
「おう、お前さん達も見学かい?工事現場ってのは見てると楽しいもんだねえ……俺も司法試験に受かる前にどうしても金に困って日雇いでやってみたがいい金になるんだ」
嵯峨は茜との話し合いが終わったというように持っていたタバコに火をつけた。
「ええ、まあそれより茜さん!」
真剣な誠の顔を見ると金髪にポニーテールの嵯峨とはどこをどう見てもその娘だとは言えそうにない姿の茜もまた真剣な表情で誠を見つめてきた。
「神前君の言いたいことは分かるわ。祥子さんのことですわよね?」
誠がここで理解したのは嵯峨が頭を下げていたのは鷹司が火をつけた祥子の処理を嵯峨が茜に依頼していたらしいということだった。
「茜さんは今でも祥子さんと付き合いがあるんですよね?あの人何をするか分からないじゃないですか……西園寺さん以上に」
「なんでアタシがそこに出て来るんだよ!アタシはただ射殺するだけだ!ミサイル撃ち込んだり、レールガンでミンチにするような真似はしねえ!」
誠の言葉に怒りをぶつけるかなめだが、射殺する時点でもうすでに論外だと誠は思っていた。
「確かに、祥子さんとは物心ついた時からのお友達……というか皆さんもご存じでしょうけど祥子さんのお母様の義子さんはお父様の腹違いの妹……つまり祥子さんと私は従妹なんです……甲武の人達はほとんどが元日本人ですから。私みたいにこんな金色でどう見てもバタ臭い洋風の顔つきなんて……修学院女子の幼年部に入ったとたんに私はいじめの対象だったんです」
少し影のあるトーンで茜はそう告白した。
「でも祥子さんはその前から友達だったんでしょ?守って……いや、明らかに過剰防衛をしたという結論が見えてるんで……」
誠はこの後、そんないじめに遭う茜を祥子が守るという展開は予想していた。そしてその結果虐めた貴族の同級生所女子達がたどった血塗られた運命をよそうしてそれ以上の質問は避けることにした。
「ええ、昔からあの人にはやりすぎるところがあるんです。弟さんがいるんですが……完全に奴隷扱い。しかもその弟さんはかえでさんと違って変な願望を日々願っているような人でなくて普通の人なんで、常に祥子さんには殺意を抱いていました」
誠はここで9歳の姉に対して殺意を抱くほどの虐待とはどういう物かと興味を引かれたがリアルに普通の人間ならそれを抱くレベルの行為を平気でしたと言って自慢しているかなめが少し離れた場所で様子を伺っているので特に追求しないことにした。
「それに私がかえでさんがかなめお姉さまに受けている虐待を話すと大変興味を持たれて……私に同じことをしてくれと言ってくれと言うんですよ。私はかなめお姉さまのような変態ではありません!」
力強く右腕を握りしめる茜の視線の先にはタバコをくわえて喧嘩ならいつでも買うという表情のかなめが居た。




