第95話 結局原因はかえでと『女独眼竜』の性癖にあった
「そんな事よりもかえでさん!伊達祥子さんって会ったことありますか?」
誠は真剣な表情でかえでに向けてそう言ってみた。
「誠君の『会った』と言うのは『寝た』と同義と捉えていいのかな?彼女との夜は素敵だったよ……その時は僕は彼女に真のマゾヒズムを見た。あれほどの女性は珍しい……同じサイボーグのどこかの誰かさんとは大違いだ」
言っていることは完全に誠の予想の範囲内でのズレ方だったが、かえでの嫌味にかなめの表情はさらに厳しくなる。
「あの『女独眼竜』もアタシと同じでぶつのもぶたれるのも好きな女で有名だったからな。あの右目の超精密望遠機能付き眼球といい……尊敬しているアイツの先祖に似たんだろ?」
吐き捨てるようにそう言うとタバコをくゆらせながらかえでを無視して目の前のユンボに目をやっていた。
「それより、あそこにいるのは嵯峨警部じゃないか?それと隊長も一緒に居る……隊長が嵯峨警部に両手を合わせているのはいつものことだが……嵯峨警部がこんな仕事と関係ないところで暇をつぶすなんて珍しいことだ」
カウラがそう言って指さす先。防音シートのはためく向こう側で茜に何度も頭を下げる嵯峨の姿があるのが誠にも見えた。
「そうですね……でもあれじゃないですか?昨日からラーナちゃんが長期休暇で遼帝国の実家の村に帰ってるじゃないですか。その間は隊長も法術特捜の仕事は全部東都警察や千要県警に押し付けるとか言ってましたから。暇なんじゃないですか?」
誠の言葉を聞いたかえでは笑顔を向けるがすぐに表情を変えた。
「そう言えば祥子さんは茜お姉さまとは修学院女子幼年部で9歳まで同窓だったはず。それ以降もやり取りがあって茜お姉さまには頭が上がらないと祥子さんは僕に鞭うたれながら告白していたよ」
かえではそう言って誠に笑いかけてきた。なんでそこにあの危険サイボーグが鞭うたれて快感に打ち震える場面が必要なのかは誠の理解を超えていたが、あの危険サイボーグと茜につながりがあることを知った誠は自分達の命を守るという決意の元、かえでを置いて嵯峨達の所に足を向けた。
「そんなに急がなくてもいいじゃないか!眼帯をした彼女が快感に打ち震える様は見ていて興奮を覚えてね……あの魅力は祥子さん独特のものだと言ったらすっかり彼女は僕の虜になったんだ」
誠は背後でそう言って笑うかえでの言葉を聞いて現在の危機の種をまいたのは他でもないかえで自身であることをはっきりと認識した。
ただ、その誠の絶体絶命の状況をなんとかできるのは茜しかいない。誠はそう確信して茜に何度も頭を下げている嵯峨の所へと足を速めた。




