第94話 『部活棟』建設とその裏事情
「なんだよ、神前も来たのかよ」
次々とトレーラーから建設重機が降ろされる光景を見学していたかなめが背後から小走りで近づいてくる誠を見るとそうつぶやいた。
なにせ重巡洋艦クラスの宇宙戦闘艦を運用するために用意された『特殊な部隊』の敷地は広大だった。
野球のグラウンドの隣、陸上用トラックの奥にその『部活棟』は作られる予定のようだが、その敷地を区切る杭の刺さった広さから考えてどう考えてもこの基地の全隊員の数か120人程度だというのにそれからは考えられない規模の建物がここに立つことを誠は悟った。
「ああ、誠君。ここならあの杭打機の動きがどうなるか見ることができるよ」
喧嘩中の姉のかなめから距離を取るように離れて立っていたかえでがそう言って手招きした。誠は仕方なくそちらに近づくが、それを不愉快そうな視線でかなめとカウラが見守っている。
「この工事ってどれくらいかかるんですか?それと……部活って野球部以外は何をするんです?」
日々、髪が伸びてきて完全に女子へと変貌して言っている『男の娘』アンは次々と工事現場に運び込まれる重機を見ながらそう尋ねてきた。
「どうだろうかねえ……鷹司のあの女狐のことだ。『福利厚生予備費』の増えた分だけ使うなんて言ってるが、大蔵官僚としてはあの存在そのものが目ざわりんだんだ。かといっておかしな発注金額を出せば司法局の監査室……ああ、麗子の居ねえほうな……そっちがいちゃもんを言って来るのは目に見えてる。だから、工期優先で最高金額の建設会社に発注を出したんじゃねえか?」
工事の機材が運び込まれるたびに上がる埃に苦笑いを浮かべながらかなめはそうつぶやいた。
「日野。貴様は屋敷を建てる際に建設会社に見積もりを立てたり工期の打ち合わせをしただろう?じゃあ、ここの工事をしている会社について何か知っていることは無いのか?」
かえでとは口もききたくないという態度でタバコをくゆらせているかなめに代わってカウラがかえでにそう尋ねた。
「そうだね。どうやらこの工事を請け負ってるゼネコンは大木組だね。あそこは仕事が早いことで有名でそれが売りなんだ。大規模開発などよりもむしろ小規模のビル建設に特化して多くの下請けに安定した仕事を供給しているから急な発注を受けてもすぐに下請け、孫請けと動き出し工事が始まる。僕の屋敷も大木組にするか、大勢建設にするか山中工務店にするか迷ったんだが……僕は工期よりもデザイン重視でね。コストパフォーマンスの大勢建設も除外して山中工務店に頼んだ。詳しいいきさつは今、千要に行っているリンに聞くと良い」
そんなかえでの言葉にリンの名が登場したことで誠はここに居る全員が命の危機に瀕していることを思い出した。




