第91話 手段の為なら目的を忘れる女
「正直私も困っているのよ。祥子さん……あの人の独占欲さえなければ仲良く私達の素敵なハーレム生活になじむこともできたでしょうけど。あの人は『かえでと誠様は私が真の快楽を追求する求道者としての道を歩んでもらう』の一点張り……困ったものよね」
困っているというよりもむしろ楽しんでいる。誠には親子丼ぶりを片付ける鷹司の姿はそんな風に見えた。
「法術師としてはかえでさん並、サイボーグとしての性能は西園寺さん以上で性格も西園寺さんそのもの……どうするんですか!そんな化け物がこの街をうろついているんですよ!怖くて外出できないじゃないですか!」
誠はもうすでにすべての希望を失っていた。
「そうなのよね。でも、そこはそれ。この『特殊な部隊』のチームワークで何とかするというのもアリかななんて思うのよ」
茶目っ気のある笑みを浮かべて鷹司はそう言った。
「すでに祥子さんの豊川潜伏の情報は渡辺さんには伝えてあるわ。それで車を10人乗りのリムジンに替えると今朝言ってたからもうすぐ届くんじゃないかしら?かえでくん、かなめちゃん、渡辺さん、アメリアさん、カウラさん……それにいざとなればクバルカ中佐や隊長まで駆けつける。戦いは数だってクバルカ中佐も時々言ってない?」
鷹司はそう言って無邪気に誠に向けて笑いかける。
「確かに、それだけ人数が居れば二人しかいない相手にはどうにかなるというか……それ以上に周りの被害がどんなになるかそれが心配なんですけど……」
鷹司のあげたメンバーのほとんどが銃を所持している。そして相手は戦闘用サイボーグでかなめのように銃の所持が自由な『蔵人守』の官位を持つとあれば当然武装していることは予想がついた。それが真正面からぶつかり合う。火の海になる街を想像して誠の背筋に寒いものが走る。
「そこだけは困ったもの……と言うか祥子さんはあの西園寺さんがまともに見えるほどトリガーハッピーで重火器至上主義者だから。対シュツルム・パンツァー用のミサイルランチャーとか毎分2000発の7.62NATO弾を発射可能なミニガンとかで襲撃を仕掛ける可能性はないとは言えない」
「その祥子さんは何者ですか!ミサイルランチャーやミニガンで襲撃されたら拳銃しか持ってないこっちは蜂の巣ですよ!サディストとかマゾヒストとか露出狂とか言うよりもヤバイ殺人狂……西園寺さんと同類じゃないですか!」
誠は思わずそう叫んだ。
「そうなのよ。自他ともに認める『伊達政宗の再来』と呼ばれている子だから殺戮と言う手段の為に目的であるかえで君と誠君を拉致するのを忘れて町を破壊しまくったりして……大変ね。ああ、それじゃあお昼も終わりだから失礼するわね。風、行くわよ」
鷹司はまるで他人事のようにそう言って立ち上がった。
「お兄ちゃん、風と楽しいことをするまでは死なないでね!」
隣の風はそう言うと軽く誠の股間をなでて部屋を出て行った。
「おい、こんなことなら『廃帝ハド』や『ネオナチ』の方がたちが良いぞ……なんと言っても連中相手には05式を使っても誰も文句を言わないからな……僕の運命はどうなるんだろう……」
誠はまだ見ぬ『女独眼竜』に愛されてしまったという恐怖に打ち震えて会議室を出ることができなかった。




