第83話 気分を変えようと食事に出かけるが
キレるランが延々とアンへの公開説教を始め、戻って来たかなめがそれを冷やかすと今度はランの矛先はかなめに向き、それに茶々を入れたかえでをランが怒鳴りつける。
そんな中、いつの間にかアメリアの姿は消えていて、カウラとリンは何事も起きていないとでもいうように事務仕事をこなす。
午前中いっぱいの機動部隊の詰め所は地獄以外の何物ではないと誠は思った。
せめてゆったりとハンガーで弁当でも食べようとハンガーに続く通路を歩いているとその出入り口のドアには大きく『立ち入り禁止』の文字が書かれた白い紙が貼りつけられていた。
「立ち入り禁止?じゃあ、昼飯はどうするの?出前取るの?」
ぼんやりと立ち尽くしていた誠の目の前でドアが開いて顔を出したのは西だった。
「おい、西。今日の弁当の販売はどうするんだよ。ハンガー以外のどこかでやってるのか?」
誠の問いに忙しそうな西は大きくため息をつくとあきれ果てた顔で誠を見つめた。
「神前さん。昨日で年度が替わったんですよ。今日からは新年度の予算ですべてが動き出すことくらい想像がつかないんですか?まず、『武悪』の『法術増幅触媒』の05式と同等クラスの菱川製の奴が届いたんでそれの換装作業が始められるんです。それに第二小隊の機体の納入後総点検作業……神前さんの機体が来た時もやったじゃないですか。今、整備班はそれで手いっぱいなんです。それに一度に四機もシュツルム・パンツァーをばらす……部品とか何処に置くんです?今ハンガーは機械部品で物の置き場も無い状態。それに整備班員も弁当を売ってる余裕なんて無いですよ」
西に説教されるようにそう言われてしまうと誠には返す言葉も無かった。西はもう一度誠の顔をまじまじと見た後、そのままドアの向こうに消えていった。
「西の奴……今年で二十歳だよな。二十歳になったからって急に偉そうになりやがって……それにしても昼飯どうしようかな……」
誠は次第に誠への当たりが強くなってきている西に不満を持ちながらそのまま仕方なく機動部隊の詰め所に帰って出前でも取ろうかと考え始めていた時だった。
「まあ、誠君。偶然ね」
そんな誠に声をかけてきた女性の声に誠は振り向いた。
そこには今日は白いスーツに真珠のネクタイ姿の鷹司となぜかわざとらしく三つの上品そうな弁当を抱えた風の姿があった。
「どうせお昼とかまだ決まってないんでしょ?ご一緒にどう?」
鷹司は朗らかにそう言うと慣れた調子で昨日も誠と一緒に食事をした会議室に足を向けた。
『このおばさん……絶対何か考えてる……嫌な予感しかしないよ』
誠は自分に好意的な笑みを浮かべて来る風を見つめながら鷹司の手にある何枚かの書類が気になりながらその後に続いた。




