第80話 方向性が根本的に間違っている姉妹の愛のカタチ
「これは……ごきげんよう。昨日はクバルカ中佐の所に泊まったそうじゃないか……僕としては少し寂しかったかな……それとこれは今朝の絞りたてだよ。昼にでも飲んでくれたまえ」
そう言って笑顔で部屋に入って来たのはかえでとリンだった。
いかにも大事そうにリンが抱えた銀色の大きめのボトルが誠に手渡される。
「ありがとう……ございます?」
いつものかえでの母乳を渡されてどうすればいいのか分からず呆然とする誠にアメリアは肩を叩いた。
「なによ!女の子が体を張ってアプローチしているのよ!もっと喜んであげないと駄目じゃいの!それより、リンちゃん。私にも……そのホルモン剤投与って出来るの?私出産経験があるし、当時はちゃんと母乳も出てたから量には自信があるんだけど」
そう言ってそのままアメリアを無視して自分の席に向う無表情なリンに向けてアメリアは笑顔でそう言った。
「ええ、医学上可能です。ただ、それが一般常識としてどうかと言う問題は別ですが。少なくともそれがアプローチになっていない事だけは間違いないというのは今の誠様の複雑そうな表情を見ればわかると思うのですが……まあ、かえで様には理解できないかもしれませんが」
さりげなく主君に対して嫌味を言って見せるのが腹黒いリンらしいと思いながら誠は仕方なくかえでの思いを無駄にしない様にと大事にボトルを机の上に置いた。
「そうよね……かえでちゃん。確かにかえでちゃんの究極の変態ぶりは誠ちゃんをドン引きさせるものだけど、今の母乳を誠ちゃんに飲ませるというかえでちゃんの心づくし……はっきり言って無駄なだけだと思うわよ。かなめちゃんが誠ちゃんを立派なマゾに調教してやると善意で言ってるのと大して変わらない……似たもの姉妹ね。どっちもアプローチが完全に間違ってる」
アメリアの毒のある言葉にかえでは余裕の笑みを浮かべて頬杖をついて第二小隊の小隊長の席からアメリアを見つめた。
「そうかな?真心と言うものは通じるものだよ。姉さんのあれは自分の趣味に誠君を強制しようとするただの身勝手にすぎないが僕の行為は僕のできるすべてをささげるということを誠君に示しているんだから。そんな僕の気持ちに誠君が気付いてくれないわけがない」
そのかえでの自信のこもった笑みに誠は冷や汗が流れていくのを感じていた。
『あのー、どっちもたいして変わらない様にしか僕には感じないんですけど。確かに母乳の方が体にはいいらしいんで、鞭で打たれたりするよりはマシですが』
そんな本音を吐露したい衝動にかられながら、このさらに事態をエスカレートさせる人間しかやってこない状況に誠は困惑していた。




