第67話 やくざの道は賭場にあり
「そして、これはやくざもんの定め……アタシもそんな中の一人なんだが、この組の一番の収入源は『賭場』だ」
そこは静かに、一言一言かみしめるようにランはそう言った。
「『賭場』?アレですか?時代劇とかで出て来るサイコロを転がして丁とか半とかやる奴……それって違法賭博ですよね?犯罪ですよね?隊長とか来てます?あの人平然と違法カジノに出入りしてるとか言ってる人ですから」
誠はあきれ果ててそう言った。
「うんにゃ、あの『駄目人間』はイカサマをやる違法カジノにはその仕組みを見つけて小遣いを稼ぐために出かけるが、この組の賭場はイカサマ無しの真剣勝負だ!サイコロを振ってるアタシが言うんだから間違いねえ!」
自信にあふれた笑みを浮かべたランを見て誠は開いた口がふさがらなかった。
司法局実働部隊は『武装警察』である。その副隊長が自ら違法な賭場でサイコロを振っている。これは職務規定違反どころの騒ぎではないことは誠にも十分理解できる。
「なあに、他のヤクザ連中は賭場と言えば稼げるものだとサイコロに細工をして客からむしり取るだけむしり取るがそんなことをするようじゃばくち打ちの名が廃るんだ。サイコロ一つに命を張る。そのサイコロには純粋に運だけがのっかっている。これは戦場に通じる心がある。アタシは幾多の戦場を駆け抜けてきた。だから、そこに戦場のすべてが詰まっていることは知っている。だから、アタシは心を込めて賽を振る。あの西園寺もそれを知ってて賭場が開かれると聞くと必ず来る」
ランは情熱的にそう誠に語り掛けた。
「西園寺さん……来てるんですね……あの人、競馬だけじゃなくてサイコロ賭博までやるんですか」
誠はかなめのギャンブラーぶりが実はギャンブル依存症でカウンセラーに定期的に通っているカウラを上回っているのではないかと思い始めていた。
「ああ、アイツはいい客だ。アイツの賭ける金は他の客の金額より三桁多いからな。アイツがここに通うようになってからはこの組の実入りは人の道に反して薬や女で稼いでる指定暴力団の比じゃなくなってる。しかし、アイツのツキの無さ……サイコロ振ってるアタシが見てても泣けてくるほどのもんだぞ。アイツここにきて一回だって勝って帰ったことねえからな。アイツは野球で負けるのはいつもついていないパーラのせいだとか抜かしているが一番の疫病神は監督の自分なんじゃねえのか?まあ、アイツにとってはあれくらいの負けの金なんてはした金なんだろうから別に気にする様子もなくある程度金をどぶに捨てた後でタバコを吸いながら出ていくのがいつものことだけどな」
ランは淡々とそう言うが、かなめがギャンブル依存症で無いのはただ単に金持ちだからだという理由が分かって誠はほっとした。




