第55話 毒殺、女宰相……誠の苦労と嵯峨の陰謀
「そしてリンさん……あの人、昔の中国の後宮でよくあったライバルの皇帝のお気に入りの女性に毒を飲ませて殺すとか……やりかねませんよ。あの人の腹黒さは筋金入りですし、あの人医者なんでそんな薬は簡単に手に入れられますし」
誠の恐怖の話題はまだまだ続く。
「いやあ、それはさすがにリンを悪く見過ぎと変な中国歴史映画……ああ、たぶん元ネタはラン辺りが遼北の三国志関係の映画を見せるついでにおすすめした中に入ってたんだろうが……そこまではやらないんじゃないの?それにアイツはかえでのおかげで気持ちよくなってる女を見るのが大好きで、しかもかえでと同じように女好きだから。殺したりせずに自分の言うことを何でも聞くように女郎上がりらしいテクニックで周りの女を自分無しには生きられない体へと骨抜きにしていく……くらいのことはやるかもね。それとお前さんは俺と秀美さんの間の子供の成長までのつなぎの皇帝なんだけど、リンの奴は意地でも自分の産んだ子供を皇帝にしようとするだろうから……まあ、そっちの方はお前さんの心配する話じゃない。俺がなんとかする」
嵯峨はリンに関しては自分にも被害が及びそうな雰囲気があるのでタバコをくゆらせながら少し真面目にそう言った。
「そしてパーラさん……あの人絶対皇帝夫人。しかも周りは社会不適合者しかいないとか言う環境に耐えられるとは思いませんよ。あの人真面目ですから。アメリアさんを軍人にするのなら何かお仕事を与えてあげないとあの人壊れちゃいそうで」
誠の心配はとりあえず気を回すことが生きがいと言う常識人であるパーラの話題になった。
「そうだね。まあ、アンリ……の野郎とやりあう時はかえでの次に使えるのがパーラだ。恐らく、その時にはアンリの後ろ盾は無くなってるからアンリは孤立無援……とはいえあの男は結構厄介だ。早めに宰相から引きずり下ろすに限る。かといってアンリが大嫌いな社会主義者の伊藤を宰相に復帰させるなんて言う案を飲むわけがない。そこでパーラが使える。皇帝は議会の承認なしに宰相を決めることができる。下手に切れすぎるかえでにはアンリも警戒するだろうが気遣いが出来るパーラが宰相になるということならアンリも身を引くかもしれない……その辺は俺が上手くやっておくから。俺のやりたくない面倒ごとをお前さんに押し付けるわけだからそれくらいの苦労はするよ」
嵯峨は余裕のある態度で遼帝国の政治事情まで自分が皇帝なんて面倒なことはしたくないという理由だけですべてを誠に押し付けようとしていることがありありと分かって誠は大きくため息をついた。




