第49話 今の幸せを噛みしめろと『駄目人間』は言った
「隊長……本気で言ってます?ふざけてません?」
誠は嵯峨の言葉に半分呆れつつそうつぶやいた。
「ああ、半分はおふざけだけど半分は本気。でもさあ、あのかえでがだよこの程度の被害……と言うか被害なんて言ったらそう言う趣味の人に怒られるわな。そんなお前の幸せな生活を提供してくれている……それ以外の問題は俺には一切聞こえてこない。ランが警察に呼び出されるというこれまでのトラブルも一切消えた。これ以上良いことは……」
「僕は嫌なんです!」
明らかに自分さえよければいいという嵯峨の態度にキレて誠はそう叫んだ。そんな事は織り込み済みのように嵯峨はタバコを取り出して火をつける。
「じゃあ、かえでの奴にそう言いなよ。お前さんも大人でしょ?『僕にはそう言う趣味はないです、でも大きくなった胸は大好きです』。そう言うだけでお前さんの疲労は一遍に吹き飛ぶわけだ。そんな事も気付かなかったの?お前さんのおつむはそう言う面では島田並みだね。アイツにはお前さんしかいない。ただ、アイツにはどうしても変態的な方向でお前さんに尽くしたいというマゾの欲求がある。次にどんな手を打ってくるかまでは俺も分からないけど」
無責任にそう言うと嵯峨は静かにタバコをふかした。
「でも、あの幸せそうに自分の母乳入りのクッキーとか焼いてるかえでさんを見ていると言い出しづらくって……」
確かに原材料に自分の母乳を使った料理を作っている厨房のかえではこれ以上ないほどに家庭的で幸せそうな女性に見えていたのは事実だった。
「そんなこと言うんだったら今の状況を受け入れなよ。その疲労も、そのうちかえでの笑顔で喜びに代わる日がきっとくる!そう信じてかえでの母乳を飲んでやれ。それが男の甲斐性と言うものだよ」
嵯峨の理屈が通ているのか居ないのかよくわからない発言に戸惑いつつも誠はどうやら現状で満足するしかないという状況にあるらしいということだけは理解した。
「その顔、納得できたみたいだね。まあ、お前さんが何を飲んでるかを知っている寮の野郎共がどんな気持ち……と言うか嫉妬だな……なのかを想像するのは止めておきな。お前さんそう言うところにだけは気が回るんだ。今やモテ男となって司法局の本局に行くたびに周りから白い目で見られている俺を参考にすると良い。そうしてプライドゼロ、他人の視線をまったく気にしない神経を見に付ければこの『モテない宇宙人』の星の『モテない人間ばかりの国』東和でもうまくやっていける。そういうこと」
嵯峨は励ましになっているのか居ないのかよくわからない発言をするとタバコの煙を吐いてニヤリと笑った。




