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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 新年度の『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第七章 失われた記憶と『ビッグブラザー』

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第43話 失われた記憶……つながった記憶

 安城はそのまま商業ビルの入り口の隣にあった地下鉄へと降りる階段に差し掛かった時だった。


 安城のコートのポケットの中で通信端末の振動を感じて安城はそれを取り出した。


 ネットと繋がった電子の脳を持つサイボーグである安城に脳に直接ではなく通信端末を通じて通信を入れて来るのは、安城の率いる公安機動隊の部下以外の人物か彼女の部下だとしても急ぎの案件ではないという意味だった。


「はい、安城です」


 安城は嵯峨を思って自然とほてっていた体に電話に出た瞬間気が付いてそれを冷やすべく地下鉄連絡口の壁に身を預けた。


『ああ、隊長ですか……今、大丈夫ですか?』


 電話先に出たのは戦闘では頼りになるもののネットの海から情報を拾って来るにはまだ経験が足りないと安城が評価している去年は言った新人のサイボーグの若い男性の曹長の声だった。嵯峨以外の声を聴いて安城はようやく身体が求めてやまなかった快楽への欲求からようやく解放された。


「大丈夫よ。それより貴方はまだ脳とネットのリンクが上手くできていないんだからその練習をするようにこの前も伝えておいたはずだけど……そんなに携帯端末が好きなの?」


 そのままトイレに入って興奮を沈めることも選択肢の一つでそれを諦めなければならなかったことに皮肉を込めて安城はそう厳しく部下に当たった


『すみません……例のリョウ・カラのこの一週間の行動記録がまとまったのでその報告をと思いまして……』


 曹長の言葉に安城は大きくため息をついてまた嵯峨の事を思い出していた。


 部下は一日で育つわけではない。初めは誰もが素人で役に立たないものだというのが嵯峨の口癖だった。


 公安調査庁時代の役所に取り上げられた業務に関する記憶以外の彼女が配属されていた機動二課は古強者ぞろいの精鋭部隊だった。元々、ネットでの怪しい動きが有ればすぐに荒事に移るそんな部局に新人が配属されることなど稀で、彼女の部下達も自分と同程度の戦闘経験とネット対応の可能な優秀な部下だったという人間関係だけは安城に残されたその人格を維持するために最低限必要とされた記憶からでも思い出すことができた。


『なるほどねえ、ベテランの優秀な部下しか持った経験のない私にかけているところをあの人は見抜いていたのね……』


 そんなことを思いながら電話口でまごついている新人の様子を想像して安城は思わず吹き出すところだった。


「わかったわ。今、大足町だから30分もあれば司法局の本局には着くから。この前みたいに漏れが無いように……カラには今のところ何一つ任意同行を求めることができるような嫌疑は無い。でも、あなたの先輩たちはそれを探して日夜あの女を追っているのよ……その苦労を無駄にしない様に」


 安城はいかにも指揮官らしい口調で新人の曹長にそう言った。


『わかりました。資料に不備が無いようにもう一度チェックし直します。それと次は直接ネットで通信しますので』


 そう言うと曹長は通信を切った。


 通話が終わった端末を見ながら、自分が今も嵯峨を求めてやまないことを自覚すると安城は苦笑いを浮かべながらそのまま地下鉄への連絡口の階段を下りて行った。

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