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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 新年度の『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第七章 失われた記憶と『ビッグブラザー』

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第39話 公安機動隊隊長が動き出す時

 東都のビジネスの中心ともいえる大足町の巨大なビルの前に停められた高級乗用車を見つめながら紺色の薄いコートの下に司法局の公安機動隊の制服を身に着けた女性が立って行きかうビジネスマンたちを眺めていた。


 彼女、安城秀美少佐は退屈そうに春霞の空を眺めながら立ち並ぶ高層ビルを一つ一つ数えるようにして見つめていた。


 その戦闘に特化したサイボーグの望遠機能付きの眼球はビルの窓際で忙しそうに歩き回る男女の姿を一つ一つ捉えながらただ、これから出て来るであろう目の前に停められたボディーガード付きのリムジンに乗り込む老人を待っていた。


 しばらくして、そのビル『菱川電器産業』の正面出口に人だかりができ始めた。


 彼等はこれから出て来る一人の老相談役の見送りのために自動ドアのスイッチを切りドアを空いたままの状態にすると静かに整列してその老人が出てくるのを待ち構えた。


 そんな様子を苦笑いを浮かべながら見つめている安城の前に数人の要人襲撃に慣れた安城の目からは背広の下に防弾チョッキを着こんだ男たちに囲まれた老人が笑顔で現れた。


 ドアの前に整列した会社の幹部たちはまるでそうするのが義務であるかのように静かに神戸を垂れた。


 老人はそれを無視してリムジンに向けてゆっくりと歩を進める。


 その様子を見ると安城は覚悟を決めたように老人とそれを護衛する男達の死角になるような位置を選んで歩き出した。


 そして老人がリムジンに到着した瞬間にそのサイボーグの身体の瞬発力を生かして一気に飛び跳ね、老人の乗ったリムジンの正面のシートに滑り込んだ。


「菱川重四郎さんですね?」


 安城は一言一言確かめるようにしてそう言った。


 安城の侵入に気付いたボディーガードたちはそのあまりの素早さに驚きを隠せないという表情を浮かべたが、安城が胸のポケットから司法局の身分証を取り出すと黙って菱川を気にしながらリムジンを取り巻いた。


「随分と乱暴なことをするんだね、司法局は?いや、それよりも私は自分の出す息が気になるよ……先ほど葉巻を吸ったばかりでね。紙巻きたばこの煙さえ嫌われる世の中だ。本人にとっては至上のものでも君のような女性を不快にしてしまわないかそれが私には心配だよ」


 そのあまりに余裕のある態度に安城はなぜか心当たりがあるような気がするのは昨日の嵯峨との情事のあと、開館に打ち震えている彼女に余裕のある態度で嵯峨がささやいたある言葉を聞いた今では当然と言えた。


「ええ、私の同僚に紙巻きたばこの愛好者がいますし、その部下の女性隊員には葉巻が手放せない隊員がいますからそのようなお傷会は無用です」


 安城のはっきりとした口調を聞くと菱川は満足げな笑みを浮かべて運転手に目をやった。

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