第37話 皇后にふさわしいのはかえでだけ……でも誠の心は……
「つまり……鷹司部長は僕はかえでさんを選ぶべきだと言いたいんですね?」
昼休みも終わりに近づいたことを察して誠はそう尋ねてみた。
「考えるまでもない……かえで君よりあなたを愛している人は他に居るのかしら?かなめさん?彼女はただ丁度いいおもちゃとしてしか君を思っていない。ベルガー大尉?あの人とは少ししか話したことは無いけど女性としての魅力はかえで君と比べるだけ可哀そうよね。クラウゼ部長?あんな人に取られるくらいなら私が君を貰うわよ……そうなれば結論は一つ」
そう言って笑うと鷹司は弁当を片付け始めた。
「まあ、隊長は自分が玉座に居なくてもいくらでもアンリ・ブルゴーニュをけん制し続けられると考えている。でもそんなに世の中は甘くないように私には思えるの。隊長は確かに政治的にも情報量においてもアンリ・ブルゴーニュなど歯牙にもかけないほどの実力を持っている。でも、それに頼りすぎるのも考えもの。現地に出向いてカラでないと見えないことは数多くあることくらい、戦場をこれまでも経験してきた君なら分かるでしょ?」
鷹司の言葉には静かにうなずくしかなかった。
たとえ、自分に帝位を継ぐ資格があったとしても自分一人で乗り込めばまさにアンリ・ブルゴーニュの操り人形として彼の権力の補完勢力の一つとして利用されるだけなのは分かり切っている。その時隣にいてアンリ・ブルゴーニュの甘言を遮ってくれるような頼りになる存在……それが務まるのはかえでかアメリアくらいのものだろう。
しかし、地球人で人造人間に偏見があると思われるアンリ・ブルゴーニュがアメリアの言うことを聞くとはとても思えない。そうなると必然的に誠が皇帝として玉座に着くには側にかえでが居ること以外では考えられない。
しかも、かえでの隣には切れ者で腹黒いリンが居り、そしてそれを支える24人の甲武の有力貴族の女性達が圧力をかけるとなればアンリ・ブルゴーニュが思った通りに動けないことは間違いない。
だがそもそも誠にはその玉座が興味が無かった。
この『特殊な部隊』の当たり前のようであたりまえでないスリルに跳んだ暮らしの方が退屈だと聞かされている王宮の暮らしよりもはるかに誠には魅力的で手放すことができないもののように感じられた。
そこにはかなめが居て、カウラが居て、アメリアが居る。そして当然かえでやリン。そのほかの仲間達がいる。
鷹司は所詮地球人なのだと誠は思った。今のままの退屈なようでスリルに満ちたあまりいい扱いはされていないがそれでもいとおしい暮らしこそが遼州人の誠にはふさわしい。男は野心を持つものと決めてかかっている鷹司と言葉が通じないことは誠ははっきりと理解できた。




