第36話 背後に控える宇宙最強の軍師
「確かに、あの経済観念ゼロの隊長を陰で支えてた人物と言うと……失礼ですけど前任の高梨部長を見ればわかりますけどそれなりにできる人なんでしょうけど……僕で良いんですか?」
誠は恐る恐る鷹司に尋ねてみた。
「まあ、これだけの陣容では遼帝国の国内はどうにかなってもアンリ・ブルゴーニュが黙っているとは思えないわね。虎の威を借りる狐の本性をさらけ出して理由をでっちあげてアメリカに遼帝国への内政干渉……最悪武力介入すら許すような状況すら起きかねないわね」
鷹司は紅茶を飲み終えるとそうなるのが当然というように物騒なことをさらりと言ってのけた。
「それじゃあ何の意味もないじゃないですか!遼帝国軍は弱いことで有名ですよ!逃げるし、降伏するし、やる気はゼロだし。いくら法術師が沢山いて戦ったら強いかもしれませんけど、旧式の武器とやる気のない兵隊でどうやって戦争するんですか!」
思わず誠はそう叫んでいた。
「その為の『特殊な部隊』じゃないの?君とかえで君がいなくなっても『特殊な部隊』には『真紅の粛清者』とアメリカが呼んで恐れているクバルカ・ラン中佐と言う切り札がある。そしてその愛機である『方天画戟』はデータ収集の目的で隣の工場においてあるけど、完全にオーバーホール済みですぐにでも出撃可能な状態にある……そしてその隊長はアメリカにとっては顔も見たくもない天才的策士の嵯峨惟基特務大佐……さあて、その時にアメリカ軍はどう動くかしら?」
まるで謎をかけるように誠に向けて鷹司はそう言った。
「確かに隊長はアメリカ軍のネバダの砂漠全域を侵入不能にした次元断層を作るような力を持ってますけど……そんなことをしたら遼帝国も次元断層だらけになりますよ。それにクバルカ中佐は『方天画戟』にはもう乗らないって言ってますし……」
自信投げにそう言う誠に鷹司は大きなため息をついた。
「ここに来るまでにかえで君やアメリアさんから君のことは聞いてたけど君って本当に事態を悪い方にしか考えられないのね。戦争と言うものは勝って政治的要求を通せてこそ意味がある。勝つことが難しいならばまず戦争事態を避けてよりよい交渉方法を考える。これも隊長から勧められて読んだナポレオン戦争時代のプロセインの参謀長であるクラウゼヴィッツが書いた『戦争論』からの言葉なんだけどね。君の背後にはこの宇宙で最強の軍師である嵯峨惟基と言う人物がいる……アメリカはその法術師としての能力よりも策士としての隊長を恐れている……『バルキスタン三日戦争』で05式広域鎮圧砲でその策謀をアメリカに見せつけたのは誰だったかしら?」
ふざけているのかそれとも本気なのか。どちらともいえない笑みを浮かべる鷹司の言葉に誠は静かにうなずくしかなかった。




