第35話 繋ぎの皇帝と切れる皇后
「それじゃあ遼帝国は地球圏の手の内に……」
誠は侵略される遼帝国を重い恐怖した。そして以前法術特捜の捜査官でこの隊舎にいる唯一の遼帝国民である捜査官カルビナ・ラーナ巡査がアンリ・ブルゴーニュが宰相になって以降のその横暴がもしアメリカの直接介入と言う事態になれば一気に加速することになるだろうことは容易に想像がついた。
「だから、『繋ぎの皇帝』が必要な訳……だから君、かえで君と結婚して帝位に就きなさい」
鷹司ははっきりとそう言った。
「僕が皇帝?無理ですよ!相手はあのクバルカ中佐を翻弄したような軍閥のトップだった宰相と地球圏最大の軍事国家のアメリカですよ!社会知識ゼロで、気の弱い僕に何ができるんですか!」
誠はそう叫んでいた。そう叫ぶしかなかった。
「ええ、何もできないわね。君一人ではたぶん何もできない……でも君の隣にはかえで君がいる。彼女は甲武の海軍省で今一番力を持っている第三艦隊提督の赤松中将と作戦本部長の前田准将の通称『赤松前田ライン』と呼ばれるグループでは一番の切れ者と言われて『斬弾正』そして今では『斬大納言』と言われるほどの才能の持ち主なのよ。確かに私達との火遊びが原因で海軍省での出世街道からは脱落したけれども遼帝国の皇后としてならばこれまでのすべてのスキャンダルは無かったことになる」
正直、鷹司の言葉には誠は呆れていた。かえでがただのエリート士官では無いことは彼女の言葉を聞いた誠にも理解できた。彼女は大局を見て物事を語れる女性である。その影響は『闇宰相』として甲武に君臨する母の康子の影響があるのかもしれない。
しかし、鷹司の言葉からは誠はなんとかして自分のスキャンダルを遼帝国と言う逃げ場を用意して誤魔化そうとしているようにしか聞こえなかった。
「確かに……かえでさんは有能なのは認めますけど……鷹司部長。それってただ単に自分が起こした問題を消し去りたいだけって考えていません?」
誠はつい思ったことを口にしていた。
「まあ、それが無いわけでもないわね。でもそれがこの遼州同盟にとって一番の方策なのは事実だもの。かえで君ならあの宰相アンリ・ブルゴーニュを罷免して皇帝の権限で憲法と議会の権限を停止して皇帝新政の復活までの道筋を作ることができる。そして新宰相には前宰相で隊長の信任の厚い遼州人民党の党首である伊藤隼人氏を据える……この前の甲武の憲法改正で甲武でも労働組合と社会主義政党の設立が認められた際に甲武労働党の招きで伊藤隼人氏が甲武を訪問した際にお会いしたんだけど……彼はさすがにあの経済観念ゼロの隊長の財布を握ってただけのことはあって切れる人だわ。それだけでとりあえず遼帝国の国内は治まり、遼州同盟は安定する」
確信を込めた口調て鷹司はそう言った。




