第27話 皇位継承権と女と策以外には興味がない皇帝
「それって……どういう意味なんでしょう?僕は理系で……あまりそう言う知識がなくって……」
誠は鷹司の言葉の真意を測りかねてそうつぶやいた。
「つまりは、あなたには皇帝を名乗る資格がある……現献帝……つまり隊長とは何度か話しましたけど、あの人は皇帝を退位したがっている。『自分は生活費5万円の暮らしが似合いなんだ……毎食満漢全席の暮らしなんか御免だね』って笑って言ってましたから。甲武四大公家でも一番の収益を誇る工業コロニー泉州を荘園として持って26の国庫への納税を義務付けられた大荘園領主の中で最大の収入を持ちながらその金のすべてをあの無駄としか思えない『武悪』のこの隊への導入以外に使ったことが無い……あのお方には地位も名誉も金も興味がない……ただ自分の策を生かし、そして目の前の小さな幸せで満足することができる典型的な遼州人……地球人の私にはちょっと理解できない考え方ですが」
そう言って鷹司は笑った。
「でも、あの人女好きですよ……たぶん地球人からすれば理解できないほど……遼州人の僕にも理解できませんから」
誠はそう言って反論した。
嵯峨には愛人が誠の知る限り三人いる。
一人は嵯峨がかえでに買ってもらった屋敷に同居している甲武国一の花魁だったことがあるというお蔦と呼ばれる女性だった。
嵯峨の若気の至りで元地球人である彼女は女郎として嵯峨に岡惚れしていつの間にか嵯峨の持つ法術師としての能力である不老不死の能力を手に入れてしまったので、47歳の嵯峨より3歳年上の50歳のはずなのだが見た目はどう見ても二十歳に届かないように見える。
甲武の元玄人女らしく日本髪に派手な着物を着て、今はすることが無いからと言って『特殊な部隊』のたまり場である『月島屋』の手伝いをして暮らしている。
そしてその『月島屋』の女将の家村春子もまた嵯峨の愛人だった。
その関係は嵯峨が復員して汚れ仕事を押し付けられてばかりの甲武の軍に愛想をつかして娘の茜を連れて東和共和国に来て弁護士を始めた時からの付き合いだという。
春子は娘の小夏の手前、二人の関係を秘密にしていたが小夏の高校進学となぜかお蔦と意気投合して嵯峨を愛する同志として行動することが多くなるとそう言うことには鈍い誠にも嫌でも三人の関係が分かってきた。
そして三人目が司法局実働部隊と並ぶ司法局の実力部隊で、主に電子戦や白兵戦等での急襲作戦を行うサイボーグばかりで構成された公安機動隊の隊長の安城秀美少佐だった。
彼女には以前から嵯峨は好意を持っていて何度も声をかけるが無視されてきたが、嵯峨の娘の茜があまりにも乱れた嵯峨とお蔦の関係をなんとかするように言われて自分の皇位継承権を安城の子供に譲るということを提案すると野心家の安城はそれに乗って来た。
サイボーグの性的快楽能力は生身の人間のそれでは精神異常をきたすほどな上に、嵯峨自身『宇宙一の女性用アダルトグッズ』と自称する嵯峨の手練手管により安城もまたいつの間にか嵯峨と関係を持つどころか、今月からは司法局本局まで片道1時間半かかる嵯峨の屋敷から職場に通うという状況になっている。
そんな嵯峨が無欲な人物だとは誠にはとても思えなかった。




