第25話 法術師になれなかったかえでの娘
「まあ、風は優秀な子ですよ……姿かたちはまるで美の結晶のようなかえで君そっくり。甲武では男女別学が基本なので風も甲武では修学院女子に通っていたのですが……毎日のように同窓生の女生徒を家に招いてお茶をして……そして私の見ていないところでキスまでしている……まだ9歳だというのに……まあ、かえで君は6歳の時にはお姉さんのかなめさんに女にされていたと聞いていますからオマセなのは仕方のないことかもしれませんわね」
何でもない事のようにさらりとかえでの秘密が暴露されて誠は弁当のご飯を拭きだすところだった。そしてその加害者があのかなめであるということも日頃の彼女の行動を見ていれば納得できてしまうところが怖かった。
「でも、風にはかえで様のような法術師の力はないし法術適性もない。普通の遼州人と地球人の遺伝子を受け継いだ女の子に過ぎない……私もその手の本は調べて遼州人の法術師と地球人の間の子は確実に法術師としての力を持つという知識ぐらいありますの。でもその様子がまるでない……そこが少し残念ですわね」
鷹司の言葉はどこか娘に落胆するような色を帯びていた。
「でも、法術師って結構大変ですよ。僕も法術関係の事件を担当してきましたから分かりますけど、この遼州人の国で法術師が数多くいる東和共和国でも法術の存在が明らかになるとそこで法術師は差別される存在になっていますから。たぶん部長もご存じの僕達の敵の一つ『廃帝ハド』はそんな状況を変えようと力ある法術師が支配する世の中を作ろうとしている……」
誠のそんな言葉に鷹司は優しい笑みを浮かべて首を振った。
「いいえ、そんなことで私は風に落胆したりはしませんわ。あの子は愛しいかえで君の子。かえで君そのもの。屈託のない笑顔と女の子が大好きな明るい賢い子です……いずれは摂関家の一つである鷹司の家を守っていくのにふさわしい器を持っていることくらいは誰にでも分かりますわ」
いかにも母らしく娘を自慢して見せる鷹司の表情に嘘はないように誠には見えた。
「でも、私には……かえで君のように自分の家を興して血の宿縁とは無縁の人には無い宿命がありますの……そして、神前曹長。あなたにもその血の宿縁は決して離れられない定めのようなものなのですよ」
ほうれん草の煮びたしをおかずにご飯を口に運びながら鷹司はそう言った。
「血の……宿縁……そして僕はそれから離れられない……一体それはどういう意味なんですか?」
誠には鷹司の言うことの意味が分からずただ当惑してそう返すことしかできなかった。




