第22話 新部長の決断と振り回される隊員達
「さすが華子さんだね……あの金は島田准尉が非合法で手にした金だから、そんなことを考える配慮と言う物を持たない姉さん以外はみんな一気に使うのをためらっていた。まあ、彼女はそれなりに仕事ができる女性だからね……僕も仕事が早くて丁寧な建設会社はいくつか心当たりがあるから……福利厚生施設の建物は5月には完成するだろう。工期を優先してお金を出すということになればどんな建設会社も他の利益の取れない工事を延期してでも飛びついてくるもの……その点では地球人の経営者も遼州人も同じなんだ」
かえでは鷹司の裁量に満足げにうなずいていた。
「それでは、皆さんも私の決定に異議が無いということでよろしいでしょうか?それでは最後に隊長から……」
鷹司は全て思惑通りに進んだというような満足げな笑みを浮かべながらパイプ椅子で退屈そうに時間を潰している嵯峨に目をやった。
「俺が締めるの?いいじゃん、もう終わりで……って言うことで解散」
そう言うと嵯峨はそのままいつものようなやる気の感じさせない態度で立ち上がるとその場から立ち去ろうと演壇を降りた。鷹司はそんな嵯峨の態度などお見通しと言うようにマイクを直してそのまま演壇から袖に向う。
演壇の上に残された儀式バッタことが大好きな幼女のランは苦々しげに二人が去っていくのを見守ると、仕方が無いというようにその後ろに続く。
最後まで演壇のパイプ椅子に腰かけていたのは意外にもアメリアだった。
アメリアは携帯端末を取り出して何やら必死に入力を続けていた。
「アメリア何してんだ?」
三々五々それぞれの持ち場へと散っていく隊員達に取り残されたような機動部隊のパイロット達。その中でアメリアの行動を注視していたのがかなめだった。
「あのアメリアさんですよ……一番今回の専用施設の建設で得をするのはあの人なんじゃないですか?まあ、これまではアメリアさんがエロゲとお笑いにしか興味がないって言うことで西園寺さん以外にもいる運航部の女子の楽器をやってる人達とかも喜ぶでしょうけど……でも西園寺さんも『軽音部』とか作ったらどうです?僕は直接聞いたわけじゃないですけど、うちの運航部の女子でもアメリアさんに隠れてバンドやってる女子が何組か居るみたいですから」
誠はそれとなくかなめに話題を振ってみた。
「連中の音楽とアタシの音楽は方向性が違うんだ。連中は日本の世紀末ロックだ。一組はいわゆるメッセージ性の強い激しいリズムの曲が好きだが……そいつ等とは話は合う。ただ、もう一方のいわゆるビジュアル系パンクロックの顔にいたずら書きしてふざけた見た目のなんだかわからねえ曲をやってる連中とは会話が成立しねえ。それと……サラが中心になってるアイドル系の連中。コイツもアタシは認めねえ。オメエもプラモでも飛行機のプラモは一切作らねえじゃねえか。それと同じこった」
そう言うとかなめは誠の言葉に特に関心が無いというように立ち去って行った。
「パチンコ部……というのはどうだろうか?整備班の男子にも愛好家が多いことだし」
「それは止めてください。ただでさえあの人達は金欠で栄養状態にまで影響が出てるんですから……クバルカ中佐に怒られますよ」
カウラの何気ない一言に誠はツッコミを入れるとグダグダに終わった新年度年度初めの儀仗だったハンガーを後にした。




