第20話 鷹司部長による『クラブ棟建設計画』
「あらあら、クラウゼ中佐……随分と面白い顔をされるんですわね?あなたは人に面白い顔を刺せるのは得意だとは聞いていますが、自分が損な顔をする事になるとは……今の顔、写真に撮られます?」
余裕の表情で鷹司は追い詰められた様子のアメリアをそう言って嗤った。
「そんなことはどうでも良いの!あのお金は私達のお金……って実際は島田君が稼いだ金だけど、島田君のお金は私のお金、私のお金は私のお金」
アメリアはどこかで聴いたことがあるような論理を展開しながら余裕を見せる鷹司に今にもつかみかかりそうな雰囲気で隣で無関係を装う嵯峨の隣で震えていた。
「そんなに警戒感をむき出しにされても困りますよ。それに……あのお金が『在る』ことが問題だと私は一度も言っていませんよ。私はあのお金が『増えすぎている』ことが問題だと言っているのです……だったら解決策は簡単ですわ。要するに使えばいい……クラウゼ中佐……あなたは多趣味で知られていますわよね?そして、あなたの部下も同じように多趣味。あなたに付き合って下品な男性の劣情を扇動するようなゲーム作りや天狗連の真似事以外にもバンド活動や演劇、他に詩歌にも興味がある隊員がこの『特殊な部隊』にも多数いるとか……それならばそれ専用の建物を建ててしまえばいい。それも飛び切り豪華な奴を……私がこんな提案をすると言ったらあなたはどう思われますか?」
鷹司の言葉に誠は言葉を失った。同じようにそれまで怒りに震えていた壇上のアメリアも力が抜けたように椅子の背もたれにもたれかかり鷹司の真意を読みかねるように放心していた。
「良い話じゃねえか……うちの倉庫と仮眠室を野球部の部室に使うのはもう限界だとアタシも思ってたところだ……ここは本来『ふさ』クラスの巡洋艦を三隻運航できるだけの土地はある。そのご立派な建物とやらをいくら建てようが誰も文句は言ってこねえ……アタシは賛成だね」
静まり返ったハンガーの最前列で話を聞いていたかなめはそう言って笑い始めた。
「そうだな、悪い話ではない。金が増え過ぎたら使えばいいというのは当たり前の話だ。私もパチンコで勝ちすぎてどうにも気分が悪い時は街道沿いの出ないと知られた店に挑戦に行く。そう言う冒険心も人には必要なんだ」
カウラもまた、納得したようにうなずいていた。
「そうだね……でも僕の望む施設はすでに寮に用意してあるから……そうだ、僕は社交ダンスが出来るからそれを我が隊の運航部の美しい『ラスト・バタリオン』の女性達にも教えてあげよう。どこに出しても恥ずかしくない教養と文化的素養を身に付ければもはや彼女を『戦う生殖機械』などと蔑む人間は居なくなる。良いアイディアだ。さすが華子さん」
かえでもまた華子の提案には乗り気なようで誠の手を握る手に力を込めた。




