第2話 かなめとかえで……誠をめぐる姉妹の戦い
「3回で3点負けてる……相手ピッチャーも良い……今日は神前を諦めて島田に敗戦処理を頼むか……」
腕組みをしながら監督のかなめはそうつぶやいた。その様子にキャッチャーの防具越しに母乳の出る乳を気にしながら妹のかえでは皮肉めいた笑みを浮かべていた。
「姉さんはずいぶんと弱気なんだね。確かに今日の誠君はストレートのスピードにいつもの乗りが無い……それは認めるけどまだ3回だよ。が……あのノーコンの島田准尉がファーボールを連発して試合をぶち壊す……目に見えている結論を口にするとは監督失格だね」
先週始まった誠争奪戦をきっかけとした姉妹のいがみ合いはまだ続いていた。原因である誠はおろおろとそれを見守るしかできない。そんな誠をため息交じりにカウラが見つめていた。
「ああ、それなら私が投げよう。島田は投球練習では結構マシだが、実際に試合になれば……信用できないな」
カウラの言葉に腕組みをするかなめがさらに難しそうな表情を浮かべる。
「カウラさん、それはあんまりじゃないですか?俺だって神前の野郎に投げ方の基本を一から教わってから去年よりは確実にコントロールは良くなっているんですよ!それに俺には決め球『すぷりっとふぃんがーふぁすとぼーる』がある!」
自分の悪口に発展しかねないと踏んだ整備班長にして不動の一番センターの島田が文句を言ってきた。
「あの球か……あれはただの遅いストレートだ。捕った僕が言うんだから間違いない。君にはようやく覚えたカーブとストレートしか使い物になる球種は無い。フォークは二球に一球はすっぽ抜けるし、スライダーは……君には恐らく投げられない。正直、君はピッチャーには向いては居ない。あえて向いている点と言えばいくらファーボールを連発しても平気でいられるその鉄の心臓の持主であるというところだけだ」
島田の言葉は誠以外の男の存在に不快感しか感じないと公言しているかえでの怒りに火をつけただけだった。
「短いイニングなら……パーラを挟むか?それで落ち着いたところでファーストから神前を戻せば多少は状況も変わるだろう」
いかにも奇策を思いついたというかなめの言葉にかえでは大きく首を振る。
「今日の誠君はスライダーの切れが絶望的なんだよ。そんな小手先でどうにかなると思うなんて……姉さんは監督を止めた方がいいかもしれないね。菰田と一緒にマネージャーでもしていればいい。僕がプレイングマネージャーとして指揮を取ればチームはより強くなる」
挑発としか思えないかえでの言葉に『球場は真正な場所である』との信念から銃を持ち込んでいないかなめはいつもなら銃を抜きかねないような怒りの表情でかえでをにらみつける。
かえでもまたかなめの短慮を馬鹿にするような視線を送りこのところ続いている姉妹喧嘩はさらにヒートアップしようとしていた。




