第18話 『裏金』を見つけた『財務のプロ』の沈黙
「まず一点、無駄な支出が多い……と言うのはこういう出先機関ではよくある話ですが、それがほとんど見受けられないことには非常に感心させられました。さすが、内府殿……いや、倹約家で知られる嵯峨隊長の部隊。まずは電気代から始まって私用電話の使用回数、冷暖房の無駄な使用、そして雑費と言う名目で利用目的のはっきりしない小金額の出費と言うものがほとんど見受けられない……一般的な甲武の東和に存在する出先機関ではこう言った私のような財務の専門家から言わせると目も当てられないずさんな会計処理が良くなされているものですが……それがまるでない……実に見事なものです」
明らかに笑顔でそう言う鷹司の言葉には皮肉の色が籠っていた。当然、それを見落とすかなめでは無かった。
「まずは褒めておいて……次にドカンと落す訳か……あのおばさんの狙いは島田が作った『あの金』だな」
かなめは苦々しげにそう言って誠の顔を見つめた。
誠にもその意味はすぐに理解できた。
鷹司の狙いは島田が地球の超大富豪にフルスクラッチ車を定期的に売ることで莫大な金額を稼ぐことで生み出された『福利厚生予備費』の存在についてここで彼女なりのその巨額の予備費をどう使うかを提案するつもりなことくらいは財務などとは無縁に生きてきた誠にもすぐに分かった。
鷹司が言うように隊の無駄遣いが少ない最大の理由はその『福利厚生予備費』を管理している菰田がどんぶり勘定でいくらでも自由に金を引き出せる以上、ただでさえ予算の厳しい隊の本予算に手を付けないという『特殊な部隊』の暗黙のルールがあるからだった。
その『特殊な部隊』の『何でも自由に使って良いお財布』にこの大蔵官僚は手を付けようとしている。
その恩恵を一番受けてエロゲ作成や市民会館を借り切っての好き勝手の限りを尽くしている張本人の壇上で嵯峨の隣に座っているアメリアの表情は明らかに絶望の色に染まっていた。
「確かに、あの金の存在は財務を預かる人間としては許すことができない存在だろうねえ……前任の高梨部長は隊の平和を考えてみて見ぬふりをしていてくれたが……結果さえよければ良しとする国防官僚と帳簿の正確性を何より重視する大蔵官僚。その大蔵官僚である華子さんにはあの金の存在は許すことができないんだろうね」
まるで鷹司の考えを読み切ったように笑顔でかえではそう言って誠を見つめる。
誠も野球部の備品買い出しやエロゲの原画の参考にと美少女フィギュアの高額な完成品をその『予備費』から引き出している以上、鷹司がどのように『特殊な部隊』の金銭的な最後の砦を攻略するかを黙って見守ることしかできなかった。




