第17話 挨拶は短く……それが『駄目人間』の前でのルール
「そんなにランはゲルパルトで何か起きてもらいたいの?俺達の任務は選挙が終わるまでゲルパルト観光をして居ろって俺は聞いてるよ。俺達が司法局の制服を着てゲルパルトの軍港や首都の近辺をウロチョロする……それだけでもネオナチの連中には脅威なんだ。それを見て連中がビビって何もしなきゃそれでおしまい。ただの観光旅行。俺達の仕事は選挙期間中何か起きたら対応すること。何も起きなきゃそれでいいじゃん」
後ろのパイプ椅子に座った嵯峨が熱い口調で演説を続けるランを見ながら聞こえよがしにそう言った。
それを見て嵯峨の長い演説が大嫌いなことを思い出したランは一度咳払いをしてハンガーの一同を見回した。
隊員達はランの熱さが過熱するほどに冷めて冷ややかな視線をランに送ってきていた。その飽きている姿に気付かないほどランも鈍くはない。
「そんな困難な任務が発生する可能性!難敵に遭遇する可能性!これを考えて今後は職務に励んでほしい!それでは新管理部長である鷹司部長からひと言……ご挨拶を!」
すぐさま話題を上手くまとめてランはそのままアメリアの隣に座る鷹司にマイクを持ったまま歩み寄った。
「甲武の大蔵官僚か……気に入らねえ」
誠の隣で鷹司に対する敵意をむき出しにした視線のかなめがそうつぶやいた。そんなかなめの視線に気づいた高梨は余裕のある笑みをかなめに投げるがかなめは顔を逸らしてそれを避ける。
鷹司はそのまま演壇に付き、定位置にマイクスタンドを固定するとまずはハンガー全員の顔を見回した。
そして納得したような笑みを浮かべると深々と頭を下げる。
「ほほう……東和の大蔵省の官僚連中とはずいぶん態度が違うみたいだな。あんなに腰の低い大蔵省の官僚と言う物を私は知らないぞ」
かなめの隣で静かにランの演説にうなずき、そして今高梨を見つめているカウラはそう言って好意的に高梨を見上げていた。
鷹司は再び笑みを浮かべるとマイクに口を近づけた。
「みなさんごきげんよう……。この度、司法局実働部隊管理部部長を拝命いたしました鷹司華子と申します。内府殿……いや、隊長は長い演説が苦手なようですので、まずは私から二点ほどお話が……事前にこの隊の財務状況に関しての報告書を読ませていただきましたのでそれに関してのご提案をさせていただきます」
そう言うと鷹司は一呼吸おいてハンガーの一番奥に視線を凝らしているようだった。誠はそれに合わせて鷹司の視線の先に立つ、こんな式典など絶対にサボりそうな人物である島田が式典の最中だというのに平気でタバコを吸っている姿があるのを見て鷹司が言い出すことが『特殊な部隊』を根本的に変えてしまうような大きな指摘なのだろうと何となく察した。




