第144話 異常熟成法の笹かまを食べ終えた後で
千代のいかにも嬉しそうな顔を見ながら笹かまを食べ終えた誠はじっと自分を見つめて来る千代に作り笑顔を向けた。
「ああ、千代さん……ありがとうございます……」
そう言ってしまう自分を情けないと思いながら誠は満面の笑みを浮かべる千代を見つめていた。
見つめあう二人だったが、そんな誠の肩を叩く人物がいた。
それは糸目をさらに細めて誠のそばに立っていたアメリアだった。
「誠ちゃん、あっちの方が結構面白そうよ」
アメリアはそう言ってかつての菰田専用席、どうやら今は祥子の手により『関白太政大臣』の席に座っているかなめの後姿と、その隣に片膝をつけて控える祥子の姿を指さした。
「あの二人……大丈夫なんですか?」
祥子と千代の身体を張った笹かま異常熟成法の成果を食べ終えた誠はげんなりした顔でいかにも嬉しそうなアメリアにそう言った。
「まあ、大丈夫かどうか……近くで観察しましょうよ!出来れば観察日記なんかもつけたりして!」
完全乗り気のアメリアは食後の熱いお茶を飲んでいるカウラに視線を向ける。
「そうだな、西園寺と伊達がいかに神前には刺激が強すぎる危険な性癖の持主であるかの証明ができるだろう。きっちり記録を取っておくべきだな」
カウラは冷静にそう言うと携帯端末を取り出してメモ機能を起動した。
完全にかなめと祥子を弄り倒す気満々のアメリアとカウラの圧に押されてすがるような視線を誠に向けて来る千代を連れて誠はそのまま『関白太政大臣』の席のかなめの所に足を向けた。
かなめの前には巨大な鯛の塩焼きと様々な小鉢が並んでいた。典型的なお姫様待遇だが、かなめのこめかみは引く付き、その顔は困惑と不愉快さに満ち満ちていた。
「おい、蔵人守。アタシに鯛を出したのは良い。どうせ『釣り部』の船上締めの一品なんだろ?確かに一口食べて天然モノらしいアジだった……でもなんでこれ以上食ったらダメなんだ?アタシは一口食っただけだぞ」
つぶ貝の小鉢を食べながらかなめは不服そうにそうつぶやいた。
「関白殿下ともあろうお方が目の前の主催に二箸目を付ける……そのような品のない行動を俺は許すことができん。なら、替えの魚を……と言いたいところだが俺の目にかなう関白殿下にお出しするのはそれしかなかった。明日からは20匹は用意させるつもりだ」
相変わらずかなめを尊敬しているのかただ単に先天的に偉そうなのか分からない口調で祥子はそう言った。
「あれよ、かなめちゃん!どこかよそ見をしたら祥子ちゃんがその鯛をひっくり返してくれるかもよ!そしたら二口目も食べられるかも!」
アメリアは嬉しそうにその光景を見てそう叫んだ。かなめのげんなりした視線はすぐにアメリアの方へと向けられた。




