第14話 結局、仕切るのは幼女副隊長だった
「オメー等!年度初めからアタシに怒鳴らせんじゃねーよ!ちゃんと並べ!年度初めなんだ!気合い入れて行けよ!」
そんな幼女のかわいらしい怒鳴り声を聞くとそれまでパーラのお願いを無視して雑談に夢中だった隊員達が静まり返る。
その視線の先には偉そうに先頭を肩で風を切って歩くちっちゃなランとその後ろにズボンのポケットに手をツッコんでやる気がまるで感じられない様に下を向いて歩く嵯峨、そしてその後ろには明らかに眠そうにあくびをしているアメリアが居た。
『やっぱり隊長にはやる気が感じられないなあ……でもあの人本当に『精神論』の塊の甲武陸軍出身なのか?あれで?あの姿のどこに『精神論』のかけらがあるの?』
一人、仮に作られた演題の前でその規則に厳しい甲武陸軍の出身らしく珍しく姿勢を正して叔父である嵯峨のやる気の無さそうに歩く様に舌打ちをしているかなめと彼女に対抗して誠の手を握ったままこちらも甲武の軍人らしく身じまいを整えているかえでに挟まれながら誠は嵯峨達を見つめていた。
そんな三人の後ろを優雅な歩き方で続く女性の姿に誠は息を飲んだ。
「鷹司華子女侯爵……いや、今日からは管理部部長の鷹司部長でしたね」
ワインレッドの派手さはないもののどこか気品を感じさせる鷹司が悠然と壇上に上がっていく嵯峨達に続いて歩く姿は隊員達にある種の動揺を与えていた。
「おい!西!マイクのセッティングはちゃんとやってるだろーな!去年みたいにハウリングだらけだったらグラウンド40周だかんな!」
壇上に上がるなり、マイクの設置をしていたこういう時は何でも気が利く整備班の機体のホープの西にランが怒鳴り声を上げた。
西は一瞬嫌な顔をしながら軽く手で合図をしてそのまま演壇から降りてランの迫力に負けて整列し始めた隊員達の群れの中に消えていった。
「おい、『駄目人間』挨拶だ。そんくらいやれ。去年もオメエはごたごた抜かしてアタシに押し付けやがった今年こそはオメーがやるんだ。少しは隊長としての自覚を持て。オメーは今年度は勝負の年だとかさっき抜かしてたじゃねーか。だったらやれ」
ちっちゃなランに壇上に上がるなりパイプ椅子に腰かけて傍観を決め込んでいる嵯峨は怒りに震える幼女に怒鳴られてもまるっきり動く様子もなくわざと天井を見上げてランの鋭い睨むような視線から逃げ回る。
「それなら私が……」
そう言って立ち上がろうとしたのはスーツ姿の鷹司だったが、ランはそれを押しとどめてそのまま思い切り恨みがましい視線を嵯峨に向けたあと、ゆっくりとマイクに向かって歩み寄っていった。




