第13話 最強の『全自動温泉卵製造器』だった機体
ハンガーにたどり着いた誠達の目には整列する気もなくただ、親しいもの同士談笑する整備班員や運航部の様々な髪の色の女子隊員の姿が目に飛び込んできた。
いくら人それぞれで『規律』と言う物を守る習性の無い遼州人で構成された東和宇宙軍の教育課程においても式ともあれば整列ぐらいはするものだし、これまでも出動や飲み会の時はそれなりに規則正しい行動をとる隊員達が明らかにやる気がなく時間が過ぎるのを待っているだけと言う状況を見て誠は少し遼州人に生まれた自分を恥ずかしく思った。
「はい!そこじゃま!終わったら島田君が開発した『全自動温泉卵製造器』で作った温泉卵を配るからちゃんと並んで!」
そう叫んでいるのはこういう時は生真面目さを発揮する運用艦『ふさ』の副長、パーラ・ラビロフ大尉だった。
『全自動温泉卵製造器』は嵯峨の専用機で今はハンガーで装甲板を外して内部のアクチュエイターをむき出しにしている法術師対応シュツルム・パンツァー『武悪』の不評の限りを尽くされた『法術増幅触媒』のなれの果てから島田が作った機械だった。その肝である法術技術後進国である甲武国が開発した『法術増幅触媒』が空気に反応して高熱を発するということで隊内でも大問題になり、結局誠の乗っている05式乙型の東和共和国の05式を開発した菱川重工のグループ会社である菱川化学素材製の『法術増幅触媒』に取り換えることで夏になったら死人が出るのではないかと言うハンガーの熱波は収まった。
しかし、その装甲板が常に高熱を発しているという性質に最初に目を付けたのはそう言うどうでもいいことに最初に気付く嵯峨だった。
嵯峨はとりあえずの法術を使用して『武悪』の売りである位相転移エンジンの亜空間への転移により理論上無限のエネルギーを確保するという機動実験で機体に乗り降りした時に装甲板に触れた時にやけどをしたということからあることを考え付いた。
それは自分の機体の装甲板に整備班員に行って適当な形に加工したバケツを作らせてそこに水を満たし、その中に卵を入れて温泉卵を作るといういかにもどうでもいいことだった。
嵯峨に言わせれば『温泉卵を作れる以外役に立たない機体』と評価された『武悪』に嵯峨は温泉卵を取りに行くとき以外は一切近付くことすらしなかった。ただ、その温泉卵は好評で、発熱しない菱川製の『法術増幅触媒』への変更が決まってからも需要がある温泉卵を作るという要請から整備班長の島田は甲武陸軍の自分達が開発した『法術増幅触媒』を使用しないなら返却してくれと言う要請を完全に無視して自分が隊員達、特に運航部の女子隊員に好評だった温泉卵を自動的に作る機械の熱源として甲武製『法術増幅触媒』を使用するという暴挙に出た。
誠はパーラの温泉卵をエサに使って隊員達に式典らしい秩序もたせようとして悪戦苦闘している姿を見ながらあの結局は『全自動温泉卵製造器』の元としてしか役に立たなかった機体の事を思い出し苦笑していた。




