第12話 やる気のない東和風の全体朝礼
「おい!始業時間だ!まずは年度初めの全体朝礼!ハンガーに行くぞ!」
始業のベルと同時に機動部隊長の席でやる気の無さそうな部下達を見回していたランは気合いを入れるようにそう叫んでどう見ても8歳児にしか見えない小さな体を張るようにして堂々と歩いて機動部隊の詰め所を出て行った。
「おーい、行くぞ。カウラ、アンついて来い」
こちらは姉妹喧嘩で疲れているのかいかにも面倒くさそうに立ちあがったかなめがカウラとアンを見回している。
「じゃあ、僕達も行こうか……誠君……一緒に行こう」
かなめとは対照的にやる気に満ち満ちているかえでは笑顔で立ち上がると真っすぐ誠の所まで歩いて行って誠の手を取って立ち上がらせた。
「はあ、でも僕も年度初めの朝礼なんて初めてなんで……」
誠は気合いの入った表情を浮かべるかえでの手に引かれてその後ろをついてくるリンと一緒に機動部隊の詰め所を出た。
廊下では管理部のパートのおばちゃん達が、パートリーダーの白石さんを先頭に雑談をしながらハンガーへと歩いていくのが見える。
「年度の切り替えは東和と甲武、それに遼帝国は4月だからね……まあ、どこでもやることは同じなんだが……甲武と東和や遼帝国では決定的に違うところがある」
笑顔でかえでは初めての全体朝礼に緊張気味な誠に向けてそう語った。
「ああ、かえでさんは甲武国海軍の出身でしかも海軍省の本省勤務が長いんですもんね。貴族制国家で伝統を重んじる甲武の全体朝礼……なんだか遼州人の僕には耐えられそうにないです」
甲武国海軍は大日本帝国海軍をモデルとしてどこまでもそのスタイルを堅持して今に至っている。その厳しい規律は誠も知るところだったし、その失敗隠ぺいを平気でやるという大日本帝国海軍の敗因の一つである性格まで似せることは無いのにと遼州人の国の軍隊の東和宇宙軍の仲間達でもよく話題になっていた。
「そうだね……甲武国軍はとりあえず士気の鼓舞、そして愛国心の再確認、そして組織への忠誠を示す良い機会としてこう言った行事を利用する……しかし、東和の軍隊にはそんな雰囲気はないらしいね。そもそも東和共和国には国籍識別のためにいかにもとってつけたような白地に一本の縦線と言うだけの国旗……やる気を感じさせないね。それに東和共和国には国歌と言うものが無い。もし地球みたいに『オリンピック』があってその度に国旗と国歌の斉唱が義務付けられたとしたらどうするつもりだろう?それにいかにも遼州人らしい今の職場で今の仕事ができればそれで良いんだという考え方……甲武海軍なら総員修正ものだよ。まあ、東和の軍隊が戦争をしないのは正解かも知れないね」
かえではそう言って笑った。誠はそのいい加減でアバウトな気質のある遼州人の中でも最も遼州人的気質の持主の隊長の嵯峨が甲武海軍よりもはるかに厳しい鉄拳制裁が日常茶飯事の甲武陸軍の出身だったことを思い出して、いったい嵯峨はそこでその上官からの雨あられの拳にどうやって耐えていたのかを疑問に思いながらハンガーに手を引くかえでに続いて本部棟からハンガーに向う連絡通路を進んだ。




