第11話 知性派にして『ヤンデレ』。それが第二小隊の二人の女上司の本質
誠が端末を起動した瞬間、機動部隊の詰め所のドアが乱暴に開かれた。
「だから!なんでオメエが連中の前で訓示をしようとするんだ!野球は魂の強い方が勝つ!技術は二の次!アイツ等はすでに甲武の中等学校野球大会の全国大会で技術があるってことは証明済みなんだ!そこに技術論なんか付け加えたって何の役に立つ!」
ドアを乱暴に開いたのはかなめでドアの外に向けていつもの乱暴な口調でそう怒鳴りつけていた。その後に続いて来たのはかえでとリン。こちらは怒りで顔を赤らめているかなめとは対照的に涼しい顔で怒り狂うかなめに軽蔑するような視線を送っていた。
「精神論?それで勝負がつくなら20年前の戦争で我が国は地球圏に勝っていたと思うよ。心がいくら強くても武器の優劣、兵站の輸送能力、兵器の生産能力、そしてそのすべてを支える国力で圧倒的に劣っていたから祖国同盟は負けた。その事実は軍人である姉さんなら当然理解しているはずだと思うんだけどな。それは野球でも同じだよ。彼等が職業野球からの本気の誘いが無かった理由は彼等にそれだけの魅力が無かった。つまり何か技術的体力的課題が残されていたという証なんだ。だったらそこを伸ばせばいい。そんな当たり前のことも分からないとは……監督失格だね」
かえではそれだけ言うと扉の所に立ち尽くして真っ赤な顔をしている姉であるかなめを無視してそのまま自分の第二小隊小隊長の席に着いた。
「ああ、誠君。調子はどうかな?栄養的には問題が無い……いや、僕の胸から出る『力の元』がさらに君の元気の支えになってくれていると嬉しいな」
画面に張り付いて姉妹喧嘩から逃避していた誠を見つけるとかえではそう言って笑いかけてきた。
『その『力の元』が僕の精神力を著しく損ねている……なんて言えないよな……』
そう思いながら顔を上げると正面の第二小隊二番機担当の席に座っているリンが誠に同情の視線を送ってきているのが分かった。
「誠様……誠様は『ヤンデレ』と言うのはお好きでないようで……そこにこそ私のチャンスがある……今からでも遅くはありませんよ。鷹司女侯爵が管理部長に就任することが現実となった今、私と既成事実を作ってしまってそのまま籍を入れてしまう。それ以外に『ヤンデレ』から逃れるすべはない……誠様もお分かりになっていると思うのですが?」
リンはかえでから聞こえない程度の小声で誠にささやきかけてきた。
確かにかえでの愛は誠には重すぎた。ただ、同じようにリンの愛も又重い。誠はランの気まぐれで第二小隊に異動になった自分の運命を呪った。




