第100話 すべてを知っていた女がやってきて……
「みんな!何してんの!あら、かなめちゃんとカウラちゃん……そしてかえでちゃんまで怖い顔をして」
そんなところにはかったかのように現れるのがいかにもアメリアらしかった。
「ああ、アメリアさん。ちょっと茜さんが奇妙な提案をしてきたものだから僕達はそれがあまりに奇妙で理解しがたいという話をしていたんだよ」
かえでの頬は引きつり、珍しく女性に対して殺意を込めた視線で茜を見つめるかえでの姿がそこにあった。
「ああ、ハンヴィーに乗ってる片目の女の子とその連れを法術特捜に引き込むとか言う話?その話を茜ちゃんから相談された時にそうすればと言ったのは私だから全部知ってるわよ」
あっけらかんと何も話していないはずの話を全て知っているアメリアの態度に誠、かなめ、カウラ、かえではただ茫然とした顔で糸目をさらに細めて最高に楽しそうにしているアメリアを見つめた。
「おい!アメリア!なんでオメエがそんなことを知ってる!アイツがハンヴィーに乗ってることまで……」
かなめは自分よりはるかに長身のアメリアの制服のネクタイを握りしめるとそう叫んだ。
「だって駅前にあんな目立つ車を停めて『司法局実働部隊男子下士官寮は何処だ!教えろ!』なんて対シュツルム・パンツァー用ロケットランチャーを突きつけられて言って来る人が茜ちゃんとこの前飲んだ時に居たなあと思ったら目の前にいたからお話ししたわけ。銃を突きつけられてもね、『話せばわかる』なんていうつまらないことじゃなくって私みたいに口の立つ人間なら上手く交渉してお互いにいいお友達になれるわけよ……分かった?」
余裕のアメリアと、郊外のベッドタウンの典型的な国鉄の駅前広場で対シュツルム・パンツァー用を構えられて何の恐怖も感じなかったアメリアに誠はただ感心していた。
「なんでその直後に私達に連絡してこなかった!あの女は危険だ!特に神前にとっては危険だ!神前を無理やり変態の世界に導こうとしている女なんだぞ!どうせ貴様の事だからそのまま近くの喫茶店までその女と車を運転していたその連れを連れてすべてを聞き出したんだろう!なぜその危険性が理解できない!」
今度アメリアにかみついたのはカウラだった。かなめがすでにアメリアのネクタイを握っているのでカウラはその長い紙を引っ張ろうとする。
「カウラちゃん痛いじゃないの!でも、鋭いわね。ほとんど当たり。で、その後茜ちゃんと相談したいってその祥子ちゃんが言うものだから茜ちゃんを呼んでそのまま晩御飯にハンバーグステーキを食べたのよ。おいしかったわよ」
「アメリアさん。全部知ってたんですね……というかハンバーグステーキの話はどうでもいいです」
面白ければすべて良しの女アメリア。そして仕事の為ならば父の嵯峨に似て敵を騙すにはまず見方からと称して敵もいないのに味方だけを騙す女茜。二人の存在に誠はただひたすら絶望していた。




