表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
5/12

第五話 呂布と張遼

「なぁ、おまえ。この道で合ってると思う?」


私は、新緑色の眷属を小枝で編んだ籠に押し込みながら話しかけた。

しかたがなかった。

精一杯努力した結果、彼しか相棒に相応しい者が見つけられなかったのだ。


森で出会った生き物は、蛾や蜘蛛がほとんど。

せめてカブトムシやクワガタであれば良かったと思うが、

その願いは叶わなかった。

木の洞や土の中を漁れば、成虫になれば期待できる幼虫を見つけられたかもしれないが、触りたくなかった。ストロンガーが相棒とか、正直憧れるけど、幼虫から育てるとなれば話は別だ。

それと余談ではあるが、クワガタ系のヒーローはネットで検索してもキングオージャーぐらいしか出てこなかった。やはりツノの加工が難しいとか物理的な問題でもあるのだろうか。

ハサミ、カッコイイのに。


ん?

森に棄てられた割には、余裕そうだなって?

バカ言うなよ、これでもSAN値はカツカツだ。

正気度を保つために、頼りになる相棒が必須だから懸命に探していたのだ。


異世界での森歩きといえば、動物の相棒が定番。

フェンリルの子供やリス、スライムでもいいと思って探してみたが、ダメだった。


スライムは、その世界観によって強さの差が激しい。


ドラクエタイプの弱くて可愛らしいモンスターであれば良かったのだが、

出会ったスライムは残念ながらクトゥルフタイプの奴だった。

わかりやすく言うと、バブルスライムをグロくリアルにしたような容姿で、

知性の欠片も感じられなかった。

言葉では言い表せないぐらいおぞましかった。


全くもって世にも恐ろしい体験をしてしまった。


体験したというよりは、まったく理解を超えていたのだが……

あ……ありのまま、今起こったことを話すぜ。

「俺は、奴の前で話しかけようと思ったら、いつのまにか逃げていた」


だって無理だもの。あれ、死ぬヤツだから。


グロいスラリンから逃げ延びて、

この世界が異世界だということが、ほぼ確定した。

ワンチャン、森の中に棄てられただけかも、と淡い期待もしていたが、

残念ながらほぼ異世界だった。


森の中で一人ぼっちとか、さみしくて死んでしまうかもしれない。

だから早急に相棒が欲しかった。

なんの武器も防具も持っていない異世界の森で、ほぼ丸裸とか、

うさぎじゃなくてもマジ死んでしまう。

あぁ、ちなみに……。

「うさぎは寂しいと死ぬ」という話は科学的根拠のない迷信だそうだ。

AIさんに聞いてみたら、「はぁ?迷信に決まってるだろバーカ(意訳)」と、かるく斬り捨てられたので間違いない。


心の友、もしくは無二の親友が某黄色い電気ネズミだったら、

「ピカピィカ、ピカピカピィカ、ピッピカピ?」

(何言ってんだよ、おめぇの耳は節穴か?)

と、軽快に突っ込んでくれたに違いない。


知ってるか?アイツ、喋るんだぜ?

「サトシー、今日の夕飯は人間の丸焼きがいいなー?」

(ピカピー、ピカピカピィカ、ピッピカピー?)

みたいにな。


まぁ、強請ってもピカチ……黄色電気ネズミが手に入るわけもない。

残念だが私は、緑色のソレで妥協した。

無念で血の涙が出てしまいそうだが、しかたがなくコレで妥協した。


イナゴ。あるいは殿様バッタかもしれない。

仮面ライダーで例えたらV3だ。

それが、私の唯一無二となる相棒になった。

ケモミミ美少女とかフェンリルとかを相棒にするなんて贅沢は、許してもらえなかった。

「世の中はなんて不公平に出来ているんだ」と痛感した。


「なぁ、おまえ……合体融合フュージョンとかできたりしないか?」


寂しい森の中で、私は呂布りょふに呟いた。

呂布とは、相棒のバッタ……いや、V3の名前だ。

過酷なこの世界、共に強く生きようぞ。


(おいやめろ、いい加減怒られるぞ、多方面から。)


そう呂布からツッコミが返ってくることもなく、

私はトボトボと森の中を彷徨った。



さて……

——異世界転生、始まってます。

今日も緊急事態で、余裕のない冒頭スタートから——こんばんは。

冷やし中華始めました、ぐらいのノリで……ども。

兄です。


いやぁ、素足で森の中を歩くとか、無謀にも程があるっすよね。

誰っすか?私をこんな過酷な環境に飛ばしたのは。

弟か?弟なのか?

隠しておいた「ごっつ盛りやきそば」を勝手に食ったくせに?

いや……あれ食ったのは親父かもしれないな。


どうしよう。

こんなにも周りが敵だらけだったとは思わなかったYO。(/o\)


そんなことを考えながら、私はシャツの袖を引きちぎり、

足に巻いて森の中を歩き始めた。

裸足で森散歩はね、さすがに無謀なんでね。


微かに聞こえる、水の流れる音。

それを頼りに意気揚おっかなびっくり々と森を歩いた。


装備は、袖のないシャツ、トランクスタイプのパンツ、布の靴。

目覚めた時より若干装備が増えた。

籠手部分が減ったので総防御力は上がっていないが。

こんな状況だから多少は疑心暗鬼になっていても、しかたがないよね。



さてさて……たまには少し、真面目に話を進めようか。

早朝の森は、うっすらと霧のヴェールに包まれた不思議な光景だったが、日の光が高く昇ると、視界は晴れて新緑の美しい息吹が優しく頬を撫でてくる。

落ち着いて聞き耳を立ててみると、湧き水か小川かはわからないが、小さく流れる水の音がうっすらと聞こえてきた。

小鳥たちのさえずりは、いつのまにか遠のいており、木立のざわめきだけが変わらずに、伴奏を奏でていた。


「川だ……」


浅く茂った雑草を踏みしめながら、しばらく道なき森の中を歩き続けると、やがて小さな小川に出た。

飛び越えるには若干遠く、泳ぐには浅い。

幅2メートルといったところだろうか。

その小川は濁りもなく、とても澄んだ色でせせらいでいた。


「水だ……これで喉の渇きを潤すことができる。」


私の心は踊った。小さな、とても小さな進展だった。

本来、よくわからぬ水源を口にすることは危険な行為だが、心の渇望を抑えきれなかった。

煮沸するにもサバイバル技術はなく、火の精霊に語りかけても応えてはくれない。


ごくり。


小さく音を鳴らしながら、喉元を通り過ぎる清流は、冷たく心地よかった。

腹を下すかどうかは運次第だったが、どうやら天はまだ私を見放してはいないようで、少し時間を置いても身体に異変は感じられなかった。


渇きも潤い、私は下流に向けて歩みを再開させると、瓢箪ひょうたんのような実がなった木に遭遇した。

実はまだ青く、明らかに熟してはいなかったが、口に運ぶと、薄いりんごのような風味が広がった。

固かったが、食べられないほどではない。

手にギリギリ収まらない大きさの実を二つほど食べ、三つ目を行こうか迷っている時に、私はとある生物に出会った。


半透明に蠢く水の塊が、少し先に生った果実に手を伸ばし、身に取り込もうとしている。

果実は、ジュワっと気泡を立てながら、その生物に溶けた。

水泡のような濁った緑色の生物をよく見ると、所々に骨の残骸が浮かんでいる。


私は瞬時に、この生物の食性を理解した。雑食だ。

まるで単細胞生物のような挙動を見せる物体を目の当たりにして、私は悟った。


やっぱり、ここは異世界だ。

そして、あの生物は……おそらくスライム。

可愛くないタイプのスライムだ。


彼?彼女?と目が合った瞬間に、私は駆け出した。

生きたまま溶かされたら、どれくらい痛いだろうか。


いやだいやだいやだ……

私は遮二無二、駆けた。


常日頃から「いつ死んでも構わない、思い残すこともない」と思ってはいたが、痛いのは勘弁だ。

特に何かの自信があるわけでもないが、持久力だけは特に自信がなかった。

100メートルも走れずにすぐ息は切れたが、それでも足早にその場を後にした。


幸いにして、スライムは私を追ってくるようなことはなかった。

生物的に、私の足は遅い方だと思うが、スライムが私より遅いか早いかで生存率は大きく変わってくる。

多少の個体差はあるが、生物の速度は心拍数におおよそ比例する。


スライムの心臓とも言える核の魔力は、心臓とは違い、エネルギー効率が一定ではない。

要は、早く動く時はエネルギーが許す限り核に注ぎ込んだ分だけ早くなるだろう。

遅く動く場合は、生存に必要な最低限のエネルギーで核を動かすことで、核の劣化を防いでいる。


生物によって、瞬きする光の点滅を認識できる速度——フリッカー融合頻度。

速度概念の差を、尺度として示す言葉だ。


私とスライムのフリッカー融合頻度がどれほど離れているかはわからないが、

もし捕食対象として追われていたら、私は生き残れなかっただろう。


速度の違いと言えば……

人間は、エネルギー消費量(代謝速度)が年齢とともに下がるため、年を取るにつれて体内での時間の流れが遅くなるとも考えられている。

動作も遅く鈍くなるように感じるのは、気のせいではない。

エネルギー消費を抑えているのだ。

生物の本能として無意識に生へ執着している。


普通に考えれば、自分の速度が遅く感じるのに比例して、1日が長く感じるようになるはず。

しかし、実際には歳を取るほど時間が速く過ぎると感じることが多い。


これは、子供の頃は多くのことにエネルギーを使い、多くの情報を処理するため一日が長く感じられ、

年を取ると活動量が減るため、振り返ると一日が速いと感じる——という感覚的な要素が関係しているらしい。


私は、懇々(こんこん)と張遼ちょうりょうを相手取り、自身の知識をひけらかすように語った。

ちなみに張遼とは、バッタの相棒の名である。

張遼とは、スライムから逃げた先で捕まえ……んん、ごほん。アーアーアー……

何かに導かれるように出会った。


ん?呂布りょふはどうしたのかって?

あいつには逃げられ……んん。

縁がなかったようで、気がついたら姿を眩ませていた。

万夫不当の名を授けてやったというのに、不甲斐ない限りである。


さて……

我が家は、今日も平和……だったかなぁ?

遠い異界の地で、想いに臥せる。


家計が火の車であることも、もうずいぶんと気にならなくなってきた。

この作品は不定期進行です。

更新するかどうかは、私の気分次第でありますが、休日に更新ぐらいが精一杯です。

今日は平日だけど頑張って書きましたw

が、次は何時になるか、予定は未定ですw


気楽に待って、軽く笑い飛ばしていただけたら幸いです。


ではでは・・・アディオ―――ス、アミーゴ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ