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第四話 満場一致のパラドックスたち

「あはははは……見てみなよ、良治。

あの子、呪文みたいなの唱え出したよ。

『出でよ土爪トウチャオ!』って、どんな魔術なんだい?」


少年のような姿をした者が、白衣を纏った青年に向けて話しかけている。

良治と呼ばれた青年は、じっと思いつめたような表情で、

「あの子」と呼ばれた男性に視線を向けながら、素っ気なく応えた。


「魔術か……たしかに、あの呪文は攻撃のためのものだけれど、

彼の唱える呪文には何の意味もない。

空想の力が顕現けんげんするこの世界でも、

意味と力が備わっていなければ何が起こるはずもない。

それは、君もわかっているだろう?」


地上から数十メートル上空の空で、

人目を気にすることもなく、二人の会話は続けられていた。

森林から離れて上空へ出れば、朝靄に隠された視界は嘘のように晴れ渡り、

帝都ルーメンの遥か西にそびえる高い山脈が朝日に照らされている。


「そんなことはわかってるよ。けれど、何か面白そうなことしてるからさ。

ね?ね?……『小宇宙コスモを燃やせ!』ってのも、何のことか知らない?」


「はぁぁ……まったく君は。

……コスモってのは、地球にある燃料を取り扱う組織の名称だよ。

きっと視界が晴れるように森を燃やしてくれって感じじゃないかな。」


「……良治は、たまにわかりやすく話をはぐらかすよね。

まぁいいよ。それで……『あの子』はどうするつもりなんだい?」


「どうするって。新たな特異点が発生するまでは、見守るしかないね。

現状、こちらから手を出しすぎると、因果律がどう作用するかわからない。」


「………そうだね。

ボクも随分と力を失ってしまったから、あまり遠い未来は見通せない。

彼のことを見守るのも、良治の仕事のひとつだし、しっかり頼むよ?」


「……わかってるさ。」


上空で会話する二人は、やがて陽光に溶け込むように、そっと静かに姿を消していった。




——ところ変わって、ここは朝靄が立ち込める森の中。

日の光が熱量を増すほどに、霧は薄くなり、視界は透明度を増していく。


「!……む?

何か出番を奪われたような気がする。」


私は胸に不快な物を感じながら、いにしえの呪文を詠唱するのを止め、

右腕に宿した邪竜の魂を静かに解き放った。

要は、休憩に入った。


——ども。開幕早々なんですが異世界転生、始めました。

今日は緊急事態なので、冒頭のちょいつかみ(無駄話)は抜きにして——

おはようございます。

兄です。



いつもどうり唐突に話を進めますが、大変なことが起こったとです。

昨晩、ご多分に漏れず軽く弟をディスった後、心地よい眠りに包まれましたが——

目覚めてビックリどっきり大仰天。

辺りに人の気配はなく、もちろん見慣れた私の部屋でもない。

そうです、私が変なおじ……違う!


そこは、霧の立ち込める深い森の奥でした。


これは転送?転移?

私は恐怖に駆られつつ、思いつく限りの呪文を詠唱してみました。

右手に封じられた魔力を解放して、精一杯挑んでみたものの——

魔法は発動されません。


どうやら魔法のない世界に飛ばされたか、

それとも山奥にすててられただけのようです。

誰かに……。

誰かと言っても、心当たりは一人しかいませんが。

おにょれ、弟め。


簀巻すまきか?

簀巻すまきの刑にでもしょされてすててられたんか?

私が何をしたというんだ。

ちょっと異世界に放り込んで、

面白おかしく笑ってやろうと計画していただけじゃないか。


まさか……計画がバレたとでも言うのか?

誰から?

もしや……寝言で呟いていたとか?

それともリスナーが報告ちくった


くそっ……無駄に考えても埒があかないか。


それにしても……。

もしここが異世界だとすると、私は主人公ということなのでしょうか。

ドキがムネムネで熱い展開でもあるな。


ふっふっふ。

私はこれでも、頭の切り替えは早い方なのだ。

いつまでも絶望に沈んでいても仕方がない、ぽじてぶに考えようか。


ただし、胸熱の展開にはやってあわててはいけない。

数々のアニメや漫画・小説を制覇してきた、自称異世界マスターの私としては、

このあとの展開を読んで、慎重に行動せねばなりませんね。



「へい!脳内会議を開催するぜ!全俺達、集合、カモン!!」


昨今の異世界モノでは定番となりつつある、脳内会議をしてみる。

緊急事態だからね。


「へい、全俺達!これからどうしたらいいと思う?」

(まずは街を見つけるべきだな。)

(いや、食料確保っしょ。動けるうちに確保するべきだ。)

(いやいや、地形確認が最優先。

どんな危険があるかも知らずに動き回るのは愚の骨頂。)

(えー、まずは二度寝しよう。

逆行転移で戻れるかもだし。っていうか、動きたくない。)


うん。さすが俺達。一糸乱れず、統一した意見で議題は決した。


「よーし、まずは現状確認だな。」

(え、一糸乱れぬとは?)

(統一してないでござる。)

(そもそも、全員の意見が一致している場合、

その見解が正しい可能性は低いというパラドックスが起こっていてですね……)


「うっせ、黙れ俺達。そんなに色々できるわけねーだろ、常識で考えろ。」

(最初から決まってるなら会議すんなし……)

(無駄な会議は、無能の証明みたいなもんだからね。しかたないね。)


常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションでしかない。

相対性理論で有名な物理学者、アルベルト・アインシュタインの言葉…………


しまった!

このネタ、前々回に使った!!


「しかし困ったぞ。

通常、異世界転生では、隠されたチート能力が発現するはず。

だが……そんな気配すらない。

俺TUEEE系の資質として、幼い頃に剣道や武術の経験が必須。

私にそのような過去の記憶はない。

とすると……ずっとピンチ系……か。」


ずっとピンチ系。

弱い主人公が、IQの低い敵の油断や、

ご都合主義のラッキーパンチで進行するタイプの物語である。

仲間や自身が、とにかく痛い目に遭うのが特徴の形式だ。


マズい……痛い目になんて遭いたくないでござる。

というか、なんだ?この展開。


全力で逃げたい。




ところで、みなさんは焼き芋の皮を剥いて食べるタイプだろうか?

それとも剥かずに食べる猛者だろうか?

ちなみに、私は半々だ。

剥きやすい所だけ剥いて、あとはそのまま食べる。

焦げてカリカリになった所も、そのままいく。


ん?脈絡も無く現実逃避するなって?

違うぞー、今ふと気になった事に全力で立ち向かっているだけだ。

じゃ、話を続ける。


昨今は、スーパーにも気軽に焼き芋が売っていて、便利だよね。

お腹に溜まるし、なにより美味しいので、

ウチのような貧乏な家庭には貴重な甘味となる。

食べるのは私だけだが。


ちなみに親父は果物の入ったゼリー系を好み、弟はコンビニスイーツ系だ。


そういえば、弟も「ウチのような貧乏な家庭は〜」とか言っていたな。

一切、家計に貢献したことがないご身分ニートで、「よく言えたもんだ」と、

癪に障るのを通り越して呆れた記憶がある。

大層ご立派な面の皮をしていると、逆に感心してもいいくらいだ。


さてと……現実逃避ゆういぎなわだいもそこそこに、そろそろ尺が長くなってきたので、

今回は打ち切り——

間違えました、〆ましょう。

打ち切りとか不吉な言葉を、軽々しく使ってはいけませんね。


それでは、いつものを……


今日も我が家は平和で——あるかどうかは、もうわからない。

家計が火の車であることは——


はっ!


俺、気がついた。気がついちゃった。


俺……今、無一文だわ。


着の身、着のまま、起きたまま。

パジャマ姿なんて大層な格好ではないが、

身につけている物はパンツとシャツだけ。

当然、財布もない。


それどころか、スマホすらない。

どーすんだよ、ようつべ見れねぇよ、アニメも漫画も小説も見れねぇよ!

どっすんだ……いや。そーゆうの、もういいから。

つか、伝わるかどうかもわかんねーから。


どうすんだよ!!


家計が火の車どころか……俺単体が、火の気配すらない燃えカス状態だった。

この作品は不定期進行です。

更新するかどうかは、私の気分次第でありますが、休日に更新ぐらいが精一杯です。


気楽に待って、軽く笑い飛ばしていただけたら幸いです。


ではでは・・・アディオ―――ス、アミーゴ!

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