思惑
「採算とれるっすかねえーーーー。」
「赤字なんだ。」
「赤字なんす。まあそれはそれで別にお二人を売り出すPR的なイベントなんすらいいんすけど・・」
「何か問題が?」
エリカとりょーちゃんとレンタルスペースで打ち合わせをしていた。
PCをたたきながら頭を抱えているエリカに質問した。
「いやね・・・あーしは法人だし瑠璃大学辞めたからもう何も制約がないんすよ。でも、
お二人の活動を認めない団体がありましてね・・・・」
「大学・・・・?」
「そうなんす。このメール見てほしいス。」
影井エリカ殿
貴殿の企画しているダンスイベントの演者についてのご相談です。
米島涼子、榊原ルナ両名は本学の学生であり、ダンス部の活動停止命令に背いております。
本件、本来ならば両名には退学処分を突きつける次第ではありますが、
イベントの中止もしくは演者の変更をもって両名の退学処分を取り消すものとします。
どうか未来ある二人の若者の将来をお考えいただきますよう、よろしくお願いします、
「た、、、、退学・・・・」
りょーちゃんはフラッと倒れそうになる。
それを私が支える。
艶やかなりょーちゃんのにおいが私の体の芯を熱くする、
「・・・・で、どうするっすかね?このままじゃ二人は退学っすよ。」
文字通りいちゃついている私らをみて、エリカが苦言を呈する。
私にとってみれば大学卒業まで生きていられる保証もない。
だったら別に退学でも問題なのだが、りょーちゃんのこのリアクションを見ると
相当答えるらしい。
一応、瑠璃大学卒業生を母にもち、これまでのコネもすべて母から受け継いだ資産のようなものだ。
それに泥を塗るというのはりょーちゃんの人生の根幹に関わる。
さすがに私のお願いをもってしても、だめな気がする。
「わたしは・・・・りょーちゃんと二人でやっていけるなら・・・・それでもいいかな。」
だめもとで言ってみる。
りょーちゃんは目を見開く。
「ルナ・・・・そこまで私のことを・・・・」
あ・・・ちょろいかもしれない。
そりゃそうか。
りょーちゃんにとって、無償の愛を注いでくれるのは私くらいなのだからね。
「・・・・・・。わかったわ。わたしも退学覚悟で・・・・」
「りょーちゃん、早まるなっす!!あーしが大学と交渉してみますから・・・・」
「エリカ。りょーちゃんの覚悟を無下にするつもり?」
言い方が少し強かったのかもしれない。
ふと空気がパンと割れるような感じに皮膚全体が包まれる。
「・・・・ルナさん、ルナさんはいいかもしれないすけど・・・これはこれでちゃんとやらなきゃだめ
だと思うんですよね。だって、瑠璃大学ダンス部がすべてのスタートなんすから。できれば大学に
認めてほしいんすよ。」
「エリカはビジネス的に成功すればいいんじゃないの?どうしてダンス部のことなんか・・・・」
エリカがPCを打つ手を止める。
画面からこちらに視線を送る。
「そりゃあ・・・・一応この仕事を始めたきっかけっすからね。そこは大事にしたいっすよ。」
きわめて真顔で。
そう返した。
ただ、その表情と語感には何か別のものが含まれていて、
エリカが嘘をついているようにしか見えなかった。




