欲情
『受けることにするわ。』
『そうっすか。あざーす。』
私はエリカの企画に乗ることにした。
『ルナ・・・ありがとう。』
瑠璃市駅前の喫茶店。
エリカとりょーちゃんも一緒だ。
りょーちゃんを見る。
赤いニット。
黄土色のチノパンに、
おでこを出す為のカチューシャ。
赤いニットはりょーちゃんの体の凹凸をよく
際立たせている。
私は唾を飲み込む。
私はもう長くない。
ならば、欲しいものは全て手に入れよう。
そう思った。
唇を舐める。
あれが良くなかった。
背徳的なキスの味。
忘れていた、あの感触。
ここまで何度となく欲望に負けそうになったが
私は私の大志の為に生きてきた。
テルが私の死を知った。
それは、この死が私だけのものではないことを
意味していた。
私を欲しい人間がいる。
私に死んで欲しくない人間がいる。
そんなことは言葉ではわかっていた。
ただ実感がなかった。
テルは教えてくれた。
あのキスで。
『じゃあ、いつから練習しようか?明日から?』
『そーっすね。ライブは2週間っすから、、
まあ明日からやれば間に合うっすね。』
『じゃあいつものスタジオで。』
喫茶店の会計を持って、退店しようと立ち上がる。
『ルナさん、これは経費で落ちますから。』
エリカが会計ボードを取る。
ふとりょーちゃんを見る。
顔を伏せて、少し表情が硬くなっている。
『りょーちゃん、頑張ろうね。』
りょーちゃんは顔をあげる。
口元は笑っていた。
目元は光を無くしたような濁った目である。
『う、うん、、が、んばろうね。』
私はりょーちゃんに違和感を感じた。
しかしながら、それよりも怯えたような表情、
熟れた体つきに目がいっていた。
私は死ぬ。
だから、私のやりたいように生きる。
カランコロンと心地よいドア鈴を鳴らして、
喫茶店を後にした。




