誘い
私は死ぬ。
誰にも知られないように死ぬつもりだった。
テルが知ってしまった。
自室で頭を抱える。
テルはどんな行動に出るかわからない。
『ふう、、、、』
薬を煽る。
『りょーちゃんのお母さんと同じ病気か、、』
私は母さんとりょーちゃんのお母さんが
成し遂げられなかった、
世界選手権で踊りたかった。
でももう無理なのだ。
間もなく私は死ぬ。
その事実だけが私の心に横たわる。
りょーちゃんと踊りたい。
それは紛れもない私の気持ちだ。
唇をなぞる。
テルとの口づけ。
背徳的な味だった。
私はテルの気持ちに答えてあげられない。
せめて彼女のお願いを叶えてあげたかった。
でもそれはなぜ?
テルはただのプロデューサーだ。
ピロン。
スマホの通知音が鳴る。
『誰だろう・・・。』
通知の名前は、エリカだった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
夜7時。
瑠璃市の駅前にある、
回るテーブルがある高級中華料理屋。
私はただ見ていた。
『食べてくださいっす、ルナさん。』
餃子を頬張るエリカ。
私に進めるくせに、皿をこちらによこさない。
『・・・・。今日は何の用?』
あんな事を言われた後だ。
私とて気分はあまり良くない。
エリカはそんなことを気にせずに
餃子を食べ続けていた。
『まあまあ、そんな怖い顔しないでくださいっす。』
エリカはそう言いながら、
口元だけ笑っていた。
目はギロりとこちらを睨むように見ている。
『あーしがここにルナさんを読んだのは
ビジネスの話をしたいからっす。』
『ビジネス?』
『ええ。あーしらの動画チャンネルはもう空中崩壊っすよね。でも登録者はそこそこいるっすから。んで、りょーちゃんはいるっす。んで、ルナさんもいるっす。』
『だから?』
『ダンスをするんすよ。ポシャッたライブをもっかい、やるんすよ。』
『誰がこっちの都合でキャンセルした奴らの
ライブのチケットを買うのよ。』
『まあ・・・そうっすよね。』
あのスタジオでの崩壊の後、
表向きは調整困難によりライブ中止にしたと
世間には発表している。
動画チャンネルでは謝罪動画も出さず、
ダンマリを決めたままだ。
コメントも辛辣に批判する内容が増えた。
『まあ・・・そこはなんとかなりますから。』
『私は・・・・踊らないわ。』
『どうしてっすか?』
そんなことはエリカに話せない。
病魔に犯されたこの状態では踊ることなんて
できない。
『りょーちゃんもこの企画に乗っかったんすけどねえ・・・・。』
『・・・・そう。』
唇を噛む。
私だって本当は踊りたい。
りょーちゃんと踊りたい。
『まあ・・・考えておいてくださいよ。あ・・・あと。』
エリカは札束を出し、個室を出る。
出る間際にこちらを振り向く。
『あんまり・・・りょーちゃん泣かすようなこと・・・・
しないでくださいね。』
エリカの顔は笑っていなかった。




