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最後の会話

母がいる病室に今日も来た。


紅葉が散り、冬の訪れを感じる。



『おか、、あさん。』


母は眠っていた。




それはいつもと変わらない光景で。

いつものように音がない空間で。



母さんはもう長くない。

そう医師から聞かされて、

何も信じられなくて。




もう一度だけ。

せめてもう一度だけ。


私の名前を呼んで、お母さん。



私の後ろには白衣を来た医師がいた。


臨終の時を待つ、

私からしたら死神にしか見えなかった。



医師は脈を測る。

お母さんの脈だけ伝える、電子音が鳴る間隔が少しずつ長くなっていく。



私の大好きな母はもう消えかけている。

私は近寄る。

母の顔に頬擦りをして。

手を握って。



エリカって、

最後にもう一度だけでいいから。



『・・・・!』



お母さんの手がピクリと動いたように感じた。


私は母の顔を見る。



そんな奇跡は起こるわけがないのに。



電子音だけが母の寿命を告げる。









ピーーーーーーーーーー






母が目を覚ますことはなかった。













母の遺品整理をしていた。

葬儀の間も

骨だけになってしまうその時も。



私の目からは涙は出なかった。

ただ、抜け殻のようになりながら。



遺品整理をしている。


遺品の中からは、


なんてことのない。




私と母が暮らした数年の記録を載せたアルバムが出てきた。



私は未練がましくも、

それを開いた。











4月1日


小学校の入学式

赤いランドセル。

かわいいエリカによく似合っている

なんとかおやすみをもらって参加できた。

私のかわいいエリカ。




5月5日

ゴールデンウィーク最終日くらいはエリカとお出かけ。一緒に遊園地に来た。ソフトクリームやお菓子を食べて、エリカはたくさんたくさん笑っていた。




6月10日


今日はエリカの誕生日。

大好きなイチゴのショートケーキとくまさんのぬいぐるみ。エリカの誕生日なのに、仕事でごめんね。エリカは何もいわないけど寂しいよね。



8月10日


1日だけのお盆休み

エリカと海水浴に来た。

焼きとうもろこし、焼きそば。

たくさん食べて、たくさん泳いだね。




『おかあさん。』


返事はない。



『おかあ、、さん、、』



9月


今日は2人で近くの公園で紅葉狩り。

エリカはたくさん笑っていた。





鼻の奥がツンとなる。

耐えられなかった。

ポタポタと、アルバムを濡らしていく。




10月


エリカはダンサーになりたいようで踊りを見せてくれた。とてもかわいかった。私を楽にさせたいから。一緒に全国をまわろうって。そんな日を夢見て、エリカを立派に育て上げたい。




『あ、あああ。かあさん!かあさん!ああああ!』



みっともなかった。

でも私はそうせざるを得なかった。



11月


私の誕生日。

エリカが何かを準備してくれてるのは気づいている。だけど、驚いたふりをしなくてはね。

こっそり準備しているところをパシャリ。








『かあさん!かあさん!かあさん!』



アルバムを抱きしめる。

かあさんの思い。

かあさんの愛。


かあさん、、、


全身の水分が無くなるくらい。




『うわああああああああああああ!!!』



眠剤とレモン酎ハイの空き缶が散らばる

闇の中。




私はかあさんの思いを抱きしめていた。




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