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私のルーツ

「エリカちゃん。お客さんに枕するのはご法度だっていったよね?」


「え・・・どういうことっすか?」



パブのオーナーから言われた言葉。



「どういうことも何も・・・・そんなタレコミが入ったんだよ。

エリカちゃん、今日限りでやめてもらえる?」



いったい誰だろうか。

ただ正直お金もかなりたまっており、ここで働く理由なんてなかった。

生きる目的も見つかったから。









それはいつも私をごはんに連れていってくれるおじさまからの

お誘いだった。



「ダンスイベントに行かないか?」




私がメイというダンサーにあこがれていることを伝えたお客さんの

一人だった。




バイトが休みの日。

待ち合わせして、東京の渋谷まで見に行った。


そこにいたのは、メイではなかった。


ただ。

かっこよかった。



ショートヘアで茶髪。

スラっとしていてただ足をよく見ると筋肉でよくしまっていて。

黒いキャミソールとホットパンツというセクシュアルな目線で見られそうな衣装も

ただかっこいいというほかない感じで着こなしている。



「ルナ」



そういう名前のダンサーだった。

年齢は1つか2つ違いの大学生だという。

隣で踊っていたのは、金髪にカチューシャ。

同じような衣装でかっこよく着こなしていた。





「りょーちゃん」






そんな名前のダンサーだった。


私は文字通り心を奪われた。

冷や水を顔面にかけられたようなあの感じはなんだろうか。


同世代くらいの女の子でこんなにかっこいい子がいるのかと。




私はその日からその二人のファンになった。







折しも、ダンスパブをやめることになった私は

二人のことを調べた。




そして追っかけになった。





瑠璃市のダンスイベントを見に行った私は声をかけた。





「へえ!!うれしいなあ!!私らのファンだって!!ねえりょーちゃん!!」


「ふーん・・・あなた今いくつなの?」


「えー!!私らと同じ年代じゃん!!瑠璃大学ダンス部に入りないよ!

うちの大学一芸入試とかあるし、、偏差値はそんなに高くないけど

うん!!君くらいならいいダンサーになるよ!!」





キャラではなかった。

だけどときめいてしまった。

お金だけなら、他のダンスパブを渡り歩いてもよかったのかもしれない。

就職だけならわざわざダンス部に入らなくてもなんとかなっただろう。



私は思い出した。


あの時。


ときめいたから、

私は瑠璃大学ダンス部に入ったんだった。


そして。

母に伝えたかった。



お母さんが眠ってからずっと大変だったけど。

私はこんなに幸せですと。

だから心配しないで。



お母さんが眠りから覚める日まで私は私の人生を

歩んで。



目が覚めたらおはようって。

見てみてお母さんって。



そしたらお母さんは「はいはい。」って笑顔で返事してくれて。






遠い記憶。

母がまだ眠る前の記憶。


母が家に帰ってくる前だったかな。



テレビの歌番組を見ながら踊っていた。

母が帰ってきて。










「エリカちゃん、上手ね!」


「へへーん。」


「将来はダンサーかしら?」


「私踊るの大好き!ダンサーになる!ダンサーになってお母さんに見せてあげる!」


「そう・・・・」


「そしたらね!お母さんもステージに呼ぶの!私はこんなかっこいいお母さんのおかげで

ダンサーになれましたってね!!」


「そう・・・。エリカちゃん。」


「ダンサーになったらね!!お母さん、私とずっと一緒にて!こういう人たちって全国まわるんでしょ?

その時はさ、ダンサーのお金があるから、お母さんは毎晩私のステージみてね!ステージがないときは

いろんなところに遊びにいこうよ!!」


「そうね・・・・」




母は優しく抱きしめてくれた。








「お母さん・・・・?」




「え・・・りか・・ちゃん。。」








母の目元は光っていた。

その光は私の額に一粒落ちてきた。

母は少し震えながら私を強く、温かく抱きしめてくれた。

私は思い出した。

母を支えたい。

メイとの出会いは何かの縁だったのだろう。

ルナさんやりょーちゃんとの出会いもすべて縁だった。


そしてこうして瑠璃大学ダンス部に入ったのも

今こうして・・・・・





母が眠って。

稼ぐためならといってなんでもやった時期はあった。

でも一番長く続いたのもダンスのバイト。

人生で充実していた時期を支えたのはダンスだった。






だとしたら。


















私はそこで目が覚めた。

再び眠ってしまっていたようだ。




横を向く。

眠剤とレモン酎ハイの缶の山。


「はは・・・何やってるんすかね。」




現実に戻される。

瑠璃大学ダンス部はもうない。


こうして薬とアルコールにまみれて、どこまでも深い闇に落ちて行っている。

いざ、現実を見ると私の熱くなった心は急激に

極寒の海にたたきおとされたようで。




ピロン!!




「携帯っすか・・・誰っすかね。」



めったにならない携帯。













「・・・・・・!!!!」

















母の主治医から着信が入っていたことを告げる電子音であった。

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