私のセールストーク
ダンスパブでのバイトは楽しかった。
来るお客さんに教えてもらいながら、おしゃべりをして
お金をいただく。
人生で初めて、居心地の良さを感じた。
お客さんは男性が多かった。
いや、正確に言うと私がつくお客さんは男性が多かった。
パブの運営が終わると、お客さんに誘われてごはんに行き、
おいしいものを食べさせてもらえた。
「ねえ、エリカちゃんって何を目指しているの?」
あるお客さんに聞かれたことがある。
私は目の前の焼肉をほお張っていた時だった。
「ああ、、ごめん、それ食べてからでいいから。」
これまでの貧しい生活の反動か、こういうただ飯にありつけるときは
とことん食べつくしてしまう。
「しかし、、よく食べるよね。」
「ああ・・さーせん。」
「いいの、いいの。こうやっておいしそうに食べてもらえるのは
ごちそうのしがいがあるからさ。」
「も・・目標すか。」
「うん。なんかエリカちゃん見ているとさ。ただここにきて
楽しく働いているだけって感じがしないんだよね。」
そう、私には目標がある。
メイのようなダンサーに。
私は自分の境遇を伝える。
この手の話をすると、さらにお小遣いがもらえることが多いのだ。
お客さんは涙ぐみながら、
「これからも僕はエリカちゃんをサポートさせてもらうからさ。」
そういうお客さんは多かった。
いいのだ。
こういう自分のヒストリーを売りにして、
お金を得るくらい。
お母さんが眠ってから、生活は厳しかったのだ。
少しくらい。
そんな生活が2年ほど続いた。
私はダンスも上達し、このままでもいいかなと思っていたある日、
私の日常はまた動き出した。




